【Netflix】『ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-』ソダーバーグが複雑怪奇なあの問題をぶった斬る!

ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-(2019)
The Laundromat

監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:メリッサ・ラウシュ、メリル・ストリープ、ゲイリー・オールドマン、マティアス・スーナールツetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

この週末にスティーヴン・ソダーバーグ最新作『ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-』がNetflixで配信されました。2016年に大規模に行われていた節税の為のパナマ文書問題。複雑怪奇、何十年に渡って行われてきた租税回避の手法が世に知れ渡った瞬間だった。その顛末を巨匠、スティーヴン・ソダーバーグが映画化した。観てみたのですが、これがめちゃくちゃ面白かった。

『ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-』あらすじ


保険詐欺の被害に遭った未亡人が、独自の調査を続ける中で知ったのは、世界各国の大富豪の資産隠しに手を貸している2人のうさん臭いパナマ在住弁護士の存在。
Netflixより引用

ソダーバーグが複雑怪奇なあの問題をぶった斬る!

ソダーバーグは、巨匠の地を築きあげながらも抜群のフットワークで新しいことに挑戦し続ける。暫く休業中であったが軽妙なケイパーもの『ローガン・ラッキー』で再び映画界に凱旋後、全編iPhoneで撮った『アンセイン』を発表する。そして今回、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』、『マネーショート』と2010年代主流となったビジネスコメディの作風を踏襲してパナマ文書問題を群像劇スタイルでぶった斬った。

そもそも、貨幣とは何かについての講義を第四の壁を破り論じるところから物語は始まる。物々交換の不自由さを克服するために生まれた貨幣は、次第に信頼の尺度にシフトしていき、様々な呼び方で貨幣は透明化された。その結果生まれたのはペーパーオフィスであり、富豪が金を隠すのに使っていたという分かりやすい概要を配置してから、実例としてドミノ倒しに崩れ去る帝国の様を描いていく。

船が沈没し、保険を請求しようにも、知らず識らずのうちに権利が様々な会社に譲渡されていき保険請求できなくなってしまう者、保険請求しようにもペーパーオフィス故に会社のある南国リゾートに飛んでも問題を解決できない者。紙を手にするだけで2000万ドルを手にする者などが描かれていく。まるでコインランドリーの洗濯機(=Laundromat)のようにぐるぐると掻き乱されていく信頼と貨幣の関係は、遠くから見ると滑稽そのもの。面白いほどに奈落に堕ちていく様は、戦慄と爆笑の連続であった。そしてメリル・ストリープが終盤、とある場所でパナマ文書問題を総括するのだが、その場所が風刺しているものがこれまた鋭い。ソダーバーグのフットワークの軽さ、そしてあれだけ複雑怪奇な問題にも拘らず飄々と映画化してしまう腕前の高さに脱帽しました。

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