ゴールドフィンチ(2019)
The Goldfinch
監督:ジョン・クローリー
出演:サラ・ポールソン、ニコール・キッドマン、ウィラ・フィッツジェラルド、アンセル・エルゴート、ジェフリー・ライトetc
評価:80点
『シークレット・ヒストリー』で注目されたドナ・タートの同名小説を、『BOY A』、『ブルックリン』のジョン・クローリー監督、『裏切りのサーカス』の脚本家ピーター・ストローハンに名撮影監督ロジャー・ディーキンス、そして『ベイビー・ドライバー』のアンセル・エルゴート主演という最強布陣で映画化した作品。グアムの映画館TANGO THEATRES(Micronesia Mall Stadium Theatres)調査で鑑賞してきました。
Rotten Tomatoesでは批評家支持率が26%(2019/09/18時点)と低く、「原作を駆け足で進めすぎ(New Yorker)」「文学の基盤が失われている(CNN.com)」といった感じで叩かれています。しかし、実際に観てみるとこれが非常に面白かったです。ってことでネタバレなしで語っていきます。
『The Goldfinch』あらすじ
A boy in New York is taken in by a wealthy Upper East Side family after his mother is killed in a bombing at the Metropolitan Museum of Art.
訳:ニューヨークの少年は、メトロポリタン美術館での爆撃で母親が殺された後、裕福なイーストサイドの家族に連れて行かれます。
※IMDb.comより引用
30分に一度ジャンルが変わる不思議な映画
本作は、通常であれば5時間以上のシリーズで描かくのに適している程、膨大な情報量と入り乱れた人間関係が炸裂しており、普通の監督や脚本家が手がけたら空中分解してしまうところを、『裏切りのサーカス』で挿話と挿話が繋がる面白さを最大限に引き出したピーター・ストローハンと、『ブルックリン』で非常に丁寧な作劇を魅せたジョン・クローリーの超絶技巧により、見事2時間半で描き切っていました。
そして、奇妙なことにこの作品は30分に一度ガラリと物語の雰囲気が変わります。最初は、テロによって母を失った少年の傷が癒えるまでを追ったヒューマンドラマに見えるのだが、それが青春ものへと変わり、そしていつの間にかミステリー、アクションサスペンスに変わっていきます。なので全く飽きることなく楽しめます。
また、映画を見慣れている人程、前半「むむっ?」と描写の違和感が心に引っかかります。やたらと回想シーンが多く焦ったく感じるところもある。それが、物語が進むと、パズルのピースが埋まっていくような快感と驚きに包まれるのです。
ただ、何言ってもネタバレになりそうなので何も言えないのがもどかしい。一つ言えるのは、あまりあらすじを調べない方がいいということだけです。
カレル・ファブリティウスの『ゴシキヒワ』について
なので、映画とはちょっと離れたところから一つ本作が楽しめるポイントを書くとしよう。本作では、オランダの画家カレル・ファブリティウスの『ゴシキヒワ』がある種のマクガフィンとして使われています。これは、陰影の強弱による画風が特徴のレンブラントの弟子である彼の代表作です。カレル・ファブリティウスは1654年のデルフト火薬庫爆発事件によって32歳の若さで亡くなり、同時に彼の作品の大半が失われました。『ゴシキヒワ』はその唯一生き残った作品の一つなのです。そのことを頭の片隅に入れておくと、本作が持つ《運命》というものを味わい深く堪能できることでしょう。メガネ男子アンセル・エルゴートの家具屋で接客する姿の美しさや、ロジャー・ディーキンスのカッコよすぎる風景描写も重なり、個人的に大満足でした。
日本公開希望です。
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