【ネタバレなし】『パラサイト 半地下の家族』パルムドール受賞!ポン・ジュノの圧倒的バランス感覚

パラサイト 半地下の家族(2019)
原題:기생충
英題:Parasite

監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシクetc

評価:100点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第72回カンヌ国際映画祭にて韓国映画初のパルムドールを獲った『パラサイト 半地下の家族』。本作は、フランス映画情報サイトAlloCinéによれば、映画メディア全36社中35社が星4/5以上をつけた作品。その噂に偽りなく、とてつもない大傑作でありました。

【ネタバレ考察】『パラサイト 半地下の家族』ブルジョワは今そこにある危機に気づけない

『パラサイト 半地下の家族』あらすじ


All unemployed, Ki-taek’s family takes peculiar interest in the wealthy and glamorous Parks for their livelihood until they get entangled in an unexpected incident.
訳:失業中のKi-taekの家族は、予想外の事件に巻き込まれるまで、裕福で魅力的なパク家に生計を立てるという独特の興味を持っています。
IMDbより引用

ポン・ジュノの圧倒的バランス感覚

近年のカンヌ国際映画祭は『万引き家族』や『わたしは、ダニエル・ブレイク』を初め、過酷な人生を描いた人を憐れむ映画にパルムドールが与えられがちだ。映画祭はアカデミー賞とは違い、少数の審査員が多数決では選ばれないアート映画に光を当てることが仕事だと思っている私は、ストレートで批判の余地がないように見える作品に賞を易々と与えてしまうのは問題だと考えている。ましてやカンヌは、フランスの中でもブルジョワが集まるリゾート地の映画祭だけに、高いところから恵まれないものを消費しているように見えてしまうのだ。

そして、ポン・ジュノの本作はカンヌ国際映画祭にウケる作品でありながらも、その構図を見事に皮肉ってみせ、尚且つ大衆娯楽映画としてもアート映画としても面白い圧倒的バランス感覚で魅せた作品でありました。

半地下に家族ひしめきあって暮らしている。窓からは殺虫剤が流れこんだり、酔っ払いが尿が入り込んで来そうな程劣悪な環境だ。そんな家族は裕福なパク家に目をつける。その家族に取り入るため、息子を家庭教師として送り込み、そのまま娘をベビーシッターに、父親は大黒柱お抱え運転手として雇われることに成功するのだ。そして、パク一家がバカンス旅行している間に家を我が物顔で乗っ取ろうとする。

ジョゼフ・ロージーの『召使』からミヒャエル・ハネケの『ファニー・ゲーム』、アレックス・ファン・ヴァーメルダムの『ボーグマン』と今まで散々映画化されてきた、謎の人物が家を乗っ取る物語を乗っ取る側から描いているのだが、そこにある視点が今までにないものを感じる。多くの乗っ取り系映画は、早々に乗っ取られる側が「乗っ取られる」と焦るシーンが挿入される。しかしながら、本作はパク家の住人が中々彼らの正体に気づかないのだ。

そして何度も執拗に映される、中途半端な階段の構図と合わせ重ねるようにして次第に黒い皮肉の存在に気づいていきます。

それはブルジョワには認知できない世界である。ブルジョワは一見、貧しい人のことを思っているように見える。しかし、その真相には辿り着けない。貧しき者がどんなに半地下で、ハンターのように蠢いていても、その存在に気づくことはないのだ。その証拠に、偽装した証明書は、「そんなの魅せないでいいのよ」とブルジョワの夫人は追いやってしまう。多少、違和感を感じても特に気にしないのだ。

そして、半地下の住民は常に地獄の綱渡りをしながら幸運を掴もうとする。この歪な対比を、何重にも層をなし、それでもってバレるかバレないかサスペンスとしての環境構築からのショータイムを重厚に魅せていく。1時間超えたあたりから次々と押し寄せる修羅場の連続に、全く先が読めずハラハラドキドキされっぱなしでした。

アカデミー賞は、異常な程にカンヌものと韓国映画を嫌うが、今回ばかりは韓国映画初のアカデミー国際長編映画賞(旧外国語映画賞)ノミネートなることでしょう。もしアカデミー賞にノミネートされなければ露骨な嫌がらせなのではと思ってしまいます。ブンブンは本作がアカデミー賞ノミネート、そのまま受賞する未来を支持します。

日本公開は2020年1月です。

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