【ネタバレ】『Girl/ガール』トランスジェンダー×バレリーナという新境地ではあったが…

Girl/ガール(2018)
Girl

監督:ルーカス・ドン
出演:ビクトール・ポルスター、アリエ・ワルトアルテ、オリバー・ボダル、ティヒメン・フーファールツetc

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

昨日から新宿武蔵野館他にて『Girl/ガール』というトランスジェンダーの少女がバレリーナを目指す映画が公開されている。昨年のカンヌ国際映画祭の時から話題となっていて、長らくみたいなと思っていた作品だけに有給をとって観に行きました。しかしながら、これが思いの外イマイチだったのです。

『Girl/ガール』あらすじ


トランスジェンダーの主人公が、バレリーナを目指して葛藤や苦悩を乗り越えながら夢を追いかける姿を描いたドラマ。男性の体にうまれたトランスジェンダーのララは、バレリーナになることが夢で、強い意志と才能、そして血がにじむような努力で、難関とされるバレエ学校への入学を認められる。しかし、成長とともに変わっていく体によってうまく踊れなくなることへの焦りや、ララに対するクラスメイトの嫉妬や嫌がらせにより、次第に心身ともに追い込まれていく。2018年・第71回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、これが長編デビュー作のルーカス・ドン監督がカメラドール(新人監督賞)、主演のビクトール・ポルスターが最優秀俳優賞を受賞した。
映画.comより引用

《繊細》というのは壊れやすいもんなんだぜ

本作はallocineによるとフランスメディア34メディア全てが星3/5以上を出しており、

“Girl” prend illico ses distances avec les attendus du drame social misérabiliste. Il se déploie comme un portrait introspectif distingué, cadré serré sur “Lara”, née “Victor”, une adolescente de 15 ans qui rêve non seulement d’être une fille, mais aussi un certain type de fille.
訳:『Girl』は惨めな社会的ドラマの期待から身を遠ざけている。それは、女の子であることだけでなく特定のタイプの女の子であることを夢見る15歳の女の子、「ララ」にきつく囲まれた際立った内省的な肖像画のように繰り広げられます。
-リベラシオン

Ce premier long-métrage éclate d’intelligence, scrute une nature injuste, marche au bord des gouffres avec une légèreté de libellule.
訳:この長編デビュー作は知性をもって爆発し、不公平な性質について探っていき、トンボのような軽やかさで裂け目のの端まで歩きます。
-ル・フィガロ

と絶賛されています。確かに本作はトランスジェンダーで、ホルモンを医学で調整しながらバレリーナを目指す少女ララの揺らぎを緻密に描いています。男でも女でもない。テープで、ペニスを締め付け、膣を作り出す手術までの間、医学療法でこの複雑な問題を克服しようとする。ララは本気でバレリーナを目指しており、また家族思いでもある。秩序を乱してまで自分の性を語ろうとも思わない。単純に女性としてバレリーナを目指すことだけに集中している。その気持ちが段々と苦しみに変わっていく。女子のコミュニティに入れなかったり、ホルモンバランスの乱れで上手に踊れなかったりする。そのことで家族を心配させたくないから、彼女はどんどん内なる引き出しに感情を押し殺していくのだが、周りはそれに気づいて心配する。

心配されたい一方、ほっといてほしいという矛盾した感情と女でも男でもないアイデンティティを失った空っぽな自分に苦しむ様子を、ドライに描いていく。第2のグザヴィエ・ドランだと囁かれているが、そんなことはない寧ろルーカス・ドンは正反対のベクトルでもって性的マイノリティの感情を捉えているのだ。このひたむきさが評価されているのはよく分かったし、その試みは賞賛に値するのだが、どうもあまり面白くないのだ。というよりかは映画に必要なドラマであったり、アクションがあまりに弱いのだ。顕著なのは、ララがバレリーナとして特訓する場面。カメラは、ララをはじめ、上半身ばかり映しているのだ。バレリーナというのは、体全体で表現するもの。ララは男から女に生まれ変わろうとしている設定なので、全身を捉えた方が良いにも関わらず、ひたすらに上半身のアップばかり魅せつけてくる。これでは、バレリーナという設定が死んでいるようなものです。

また、物語も練習場面と家族や友人との会話シーンを交互に並べた感じが強く単調だ。そして、一番よろしくないと思ったのは、あれだけ繊細な感情を描写していったのに、最後の最後でいきなりペニスを切断するあからさまに狙ったクライマックスを設置しているところにあります。切断して、彼女がバレリーナとして跳び立つラストならまだしも、ペニスを切断して、入院した後に街を飄々と歩く彼女を映して映画が終わってしまう。これでは折角積み上げてきた、感情の層がショッキングなラストという強烈なカラーによって汚く染められてしまうもの。全てが台無しになってしまうのだ。なんて勿体無いことをするんだ、リベラシオンは感動ポルノからの逸脱を褒めているが、これこそ感動ポルノなのではと思ってしまいます。

結局のところ、繊細な感情を捉えることには成功しているが、お粗末な映画にしか見えませんでした。残念。

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