【カンヌ国際映画祭特集】『Amour Fou』ウェス・アンダーソンが退屈そうに『若きウェルテルの悩み』を撮ったら?

アムール・フ(2014)
Amour Fou

監督:ジェシカ・ハウスナー
出演:Christian Friedel, Birte Schnöink, Stephan Grossmann etc

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

皆さんはジェシカ・ハウスナーをご存知だろうか?えっ知らない。大丈夫です。ブンブンもよく知りません。ただ、カンヌ国際映画祭においてジェシカ・ハウスナーは常連監督で『Inter-View』がシネフォンダシオン部門でスペシャルメンションを受賞してから勢いづいて、『Lovely Rita』、『Hotel』、『Amour Fou』はある視点部門に出品されました。そして今回初めてコンペティション部門にジェシカ・ハウスナー進出を決めました。そんな彼女の最新作『Little Joe』は美しさと医療価値のある植物を開発したシングルマザーの疑惑を描いたSF映画となっています。今回、ジェシカ・ハウスナーコンペ入りを記念して、過去作『Amour Fou』を観てみました。

『Amour Fou』あらすじ


Berlin, the Romantic Era. Young poet Heinrich wishes to conquer the inevitability of death through love, yet is unable to convince his skeptical cousin Marie to join him in a suicide pact. It is whilst coming to terms with this refusal, ineffably distressed by his cousin’s insensitivity to the depth of his feelings, that Heinrich meets Henriette, the wife of a business acquaintance. Heinrich’s subsequent offer to the beguiling young woman at first holds scant appeal, that is until Henriette discovers she is suffering from a terminal illness
ブンブン訳:ロマン主義時代のベルリン。若き詩人のハインリッヒは愛を通じて死の必然性を克服しようとするが、彼を不審に思う従兄弟のマリーはこの自殺協定に乗ってくれません。ハインリッヒは従兄弟の鈍感な感情の深さに悩まされている一方で、ビジネス仲間の妻にあたるヘンリネットと出会う。ハインリッヒはこの魅力的な女性に申し出て初めて、ヘンリネットが末期症状に苦しんでいることを発見するのであった。
imdbより引用

退屈なウェス・アンダーソン

本作は、ドイツの劇作家ハインリヒ・フォン・クライストと癌に苦しむ人妻ヘンリエッテ・フォーゲルがピストル心中した事件を基にした歴史劇です。まるでウェス・アンダーソンのような可愛らしい舞台装置を固定カメラで撮り、絵画を観ているような雰囲気で、思いつめた劇作家の晩年を描いています。そして内容は、ある意味『若きウェルテルの悩み』そのものです。『若きウェルテルの悩み』はヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの失恋話を基にしたラブストーリーで、美女に思い詰めたウェルテルがピストル自殺するまでを描いた作品。ウェルテルは小説の中で自分を殺すことで、自分の心にあるモヤモヤを解放したのですが、ハインリヒ・フォン・クライストは残念ながらバッドエンドでした。そんな彼を映画というフィクションの世界で殺して成仏しようと思っているかのごとくこの作品は君臨します。居心地が悪く、全くもって噛み合わない世界。美しい情景なのに、合わない歯車を無理やり動かすようなぎこちなさが作品全体に伝播していき、ハインリヒ・フォン・クライストがひたすらに悶々とする様子を観客に突き詰めます。

なので、歴史クラスタとか、ハインリヒ・フォン・クライストクラスタでないと割ときついところがあり、退屈なウェス・アンダーソンという枠組みを抜け出すのは容易ではありません。ラストのピストル自殺シーンのショットのカッコよさこそプラスに働くが、Not for me 割と辛い作品でした。Filmarksではジェシカ・ハウスナーはそこまで歓迎されていないのですが、果たしてコンペティション初進出作品のレベルはいかがなものだろうか?

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