名探偵ピカチュウ(2019)
Pokémon Detective Pikachu
監督:ロブ・レターマン
出演:ジャスティス・スミス、キャスリン・ニュートン、渡辺謙、ビル・ナイ、リタ・オラetc
評価:50点
ポケモンがハリウッドで実写化するとは誰が予想できたことだろうか?実写版ポケモンといえば、2005年頃にアメリカの人気Youtuberがポケモンあるあるを巧みに織り交ぜたファンムービー「What happens if Pokemon is real?」や数年前に話題となったVFX職人RATE先生の動画「【実写ポケモンGO戦争】もしもミュウが現れたら?壮絶な奪い合いバトル」など、ネットカルチャーの世界を漂う存在でした。それが、ボンクラオタク映画を得意とするレジェンダリー・ピクチャーズが満を期して実写化したのです。昨年に発表された予告編では、あまりに毛並みがリアルすぎるポケモン像に不気味の谷を感じ、多くの映画ファンは拒絶反応を示したものの、公開が近づくにつれて、キモ可愛いシワシワのピカチュウや、煽り顏のバリヤード、質感がリアルすぎるコイキングなど、オタク心に刺さるビジュアルに映画ファンのボルテージが上がっていきました。また、デッドプールことライアン・レイノルズが徹底的にピカチュウになりきるメイキングがこれまた好感を得、世界的に歓迎ムードに包まれるようになりました。そして、日本では世界最速一般公開を迎えたのですが、ブンブンの地元の劇場は満席続出大盛況の出だしとなりました。10年前では想像もできない未来がやってきたのです。そんな『名探偵ピカチュウ』観てきました。残念ながらスケジュールの都合で吹き替え版を観ました。『名探偵ピカチュウ』あらすじ
世界的人気を誇る日本発のゲーム「ポケットモンスター」シリーズの「名探偵ピカチュウ」をハリウッドで実写映画化。子どもの頃にポケモンが大好きだった青年ティムは、ポケモンにまつわる事件の捜査へ向かった父ハリーが家に戻らなかったことをきっかけに、ポケモンを遠ざけるように。ある日、ハリーの同僚だったヨシダ警部から、ハリーが事故で亡くなったとの知らせが入る。父の荷物を整理するため、人間とポケモンが共存する街ライムシティへ向かったティムは、自分にしか聞こえない人間の言葉を話す“名探偵ピカチュウ”と出会う。かつてハリーの相棒だったという名探偵ピカチュウは、ハリーがまだ生きていると確信しており……。「デッドプール」シリーズのライアン・レイノルズが名探偵ピカチュウの声を担当し、「ジュラシック・ワールド 炎の王国」のジャスティス・スミスが主人公ティム、渡辺謙がヨシダ警部補を演じた。また、日本語吹き替え版でティムの吹き替えを担当した竹内涼真が、ポケモントレーナー役で本編にカメオ出演も果たした。監督は「グースバンプス モンスターと秘密の書」のロブ・レターマン。
※映画.comより引用
ポケモンの愛を感じる一本
流石はレジェンダリー!オタク魂炸裂のポケモン愛に溢れる作品でした。ポケモン履修者にとって、たまらないショットが所狭しと並び、他のオタク刺激型映画のように「ここ好きでしょ」アピールをせずにポケモンの世界観を作り込むことに注力しているところが好感持てる作品でした。例えば、街の場面で何気なくカメラがパンしているのですが、そこには道路をカビゴンが爆睡封鎖してしまい、カイリキーが交通整理をしていたりするのです。また、プリンのバルーン風船を膨らませているところに沢山プリンが寄ってたかって「プププリン?(これは何?)」と訪ねている場面が、世界観に溶け込んでいる。単に、ポケモンと人間の共存する世界が風景として描かれてはいない。しっかり奥にいるポケモンの物語まで作り込んでいるのです。また先述の通り、ポケモンの質感は非常に緻密です。リザードンは革のような厚みを強調させ、ゲンガーは実態の重みと、幽霊としての粒子を巧みに使い分け、コイキングのツルツルした質感にあれだけの手間をかける。ゲームではほとんど見ることのできないバリヤードのパントマイムをじっくり見せてくれる。メタモンはカイリキー、リザードン、さらには人間にまでトランスフォームします。何と言っても、コダックの35mmフィルムでコダックを仕留めるネタまで入れてくるのだ。ポケモンの進化も当然ながら魅せてくれます。そして、なんと面白いことでしょう。ストーリーの基幹に『ミューツーの逆襲』の、人間のエゴによって生み出されたミューツーの怒りを持ってくるのです。日本は、7月に3Dアニメの『ミューツーの逆襲』リメイクを公開するが、大丈夫か心配になる程、ハリウッド版のレベルが高くて興奮しました。なんたって、ポケモン状態のミューツーと、博士の魂が乗り移ったミューツーの表情の微妙な差異まで演出されているのです。これは凄すぎます。街中の日本的描写も、『ブレードランナー』を意識しつつも、日本語はしっかり整理されており、エンディングまでしっかり日本とポケモンリスペクトに溢れている。これはハリウッドから日本へのラブレターなんじゃないかと思うほど熱い。
確かに、物語は全然ミステリーなんぞしていない名探偵コナンスタイルだし、女ジャーナリストのルーシーがキャラクターとして上手く生きていない。ただティムの横にいるポケモン同然な存在としているだけ感が強かったりする。ポケモンを凶暴化させる薬描写も、割とピカチュウ吸っているんではと思ってしまう場面がいくつかあります。なんだけれども、ここまで愛を魅せられたら甘くなります。
ただ…吹き替えが…
では、何故ブンブンの評価は50点なのか。その原因は吹き替えにつきます。まず、ピカチュウの声があまりに下手すぎるのです。下手というよりかは映画から浮いていて、ピカチュウから出てくるような言葉に見えないのです。「おい、ぼうず行くぞ!」なんてピカチュウは言いません。ライアン・レイノルズの場合、ピカチュウ感とサブカルの暴走をコントロールしているから予告編で魅力的に映り、違和感がだんだん消えていったのですが、これは全編違和感しかありませんでした。妙にライアン・レイノルズに寄せようとして、自分のストッパーで感情を前に出せていない。世界観から一歩引いた場所から喋っている感じがするのです。
そしてエンドロールで驚愕しました。なんとピカチュウの声を演じたのが西島秀俊だったのです。西島秀俊とピカチュウが結びつかなくて大草原不可避でした。山田孝之の方が素晴らしい演技を魅せてくれたのではと感じるし、だったら寧ろ、アイドル。King & Princeから配役した方が面白い化学反応観られたのではと勘ぐってしまいます。
また毎度のことですが、渡辺謙は自分の声を吹き替えるとどうしてあんなに魂がこもっていないのでしょう?ギャレス・エドワーズ版『GODZILLA ゴジラ』の時同様、感情のこもっていない演技にこれまたゲンナリしました。
ティムの声を担当した竹内涼真あたりは、海外ドラマの吹き替えだと思って観れば耐えられたし、ミューツーの声を担当した山寺宏一は案の定素晴らしい演技でしたが、やはり最後まで違和感がブンブンの集中力を奪い、結果として思いの外楽しむことができない作品に留まってしまいました。割とこの吹き替え版は罪深いと感じました。
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