ノベンバー(2017)
November
監督:ライナル・サルネ
出演:レア・レスト、ヨールツン・リイク、アルヴォ・ググマーギetc
評価:採点不能
親友であり、映画超人のKnights of Odessaさんが2018年映画ベストテン6位に挙げていたエストニア映画『ノベンバー』。アカデミー賞エストニア代表に選出された作品なのですが、あらすじを聞いても「ちょっと何言っているのか分からない」富澤たけしでした。
使い魔というか車輪が回転しながら、小屋に入っていき、牛を誘拐。そして男の僕になるのだが、男の仕事を受け入れるとバグって爆発する…
どうでしょうか?理解に苦しむことでしょう。確かにタイヤが人を殺しまくる『ラバー』なんて映画はあるが、これは…
奇遇にも米国iTunesに配信されていたので即買いしてみました。
Knights of Odessaさんの2018年映画ベストテン
1.四月の永い夢
2.いい意味で小悪魔
3.コロンバス
4.ガールズ(1968)
5.Cold War あの歌、2つの心
6.ノベンバー
7.心と体と
8.パンとバスと二度目のハツコイ
9.象は静かに座っている
10.ブラ物語
番外編 ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト
『ノベンバー』あらすじ
In a poor Estonian village, a group of peasants use magic and folk remedies to survive the winter, and a young woman tries to get a young man to love her.
ブンブン訳:
貧しいエストニアの村では、農民のグループが冬を生き残るために魔法と民間療法を使う。そして、少女は若い男性の寵愛を受けようとする。
異次元の面白さ
映画ファンを10年やっていると、初期の映画の知識がなかった時代を羨ましくなる。『ファイト・クラブ』や『2001年宇宙の旅』、『惑星ソラリス』など異次元の面白さを純粋に楽しめたあの時代に戻りたくなる。今や、映画を観ると自動的に引用元が脳内に飛び込んでくる厄介な能力に悩まされ、それに逆らうように未知なる面白さを追い求める。
そんなブンブンが今年『ツイン・ピークス The Return』に引き続き、異次元の面白さに浸ることができた作品がこれだ!これを発掘したKnights of Odessaさんも尊敬に値する。彼の解説は1mmも間違っていなかった。本当に冒頭から、使い魔ポジションの車輪が回転しながら小屋に押し入り、牛を誘拐するところから始まるのです。ヘリコプターのように車輪を回転させながら、「タケコプター」と言わんばかりに空を自由に飛びたいなを実行するのです。しかし、この車輪間抜けである。木に激突して地面に追突するのです。そして、奥からおっさんが登場。「牛だ!奪おう」と強奪するのです。動けない使い魔はこう言う。「俺を起こしてくれ。そして仕事をください。」
おっさんは、「俺の僕になるかい。じゃあ、最初に仕事を与えよう。俺に糧を届け給え。」
そして意気揚々と車輪はお使いに行き、パンを入手するのだが、無限ループに陥ったゴミプログラムのように暴走して大爆発してしまう。
これが冒頭10分の出来事だ。
そこから、車輪の話はput aside!
トゥイードル・ディー&トゥイードル・ダムVSトゥイードル・ディー&トゥイードル・ダムな挿話、服を奪い合う女性(安っちい指輪ごときで、心が揺らぐ意思の低さ)、突然『ハードコア』さながらのPOV殺戮劇、そして何故か復活して居候すみっこぐらしな車輪の使い魔。幻影奇譚の極みが画面を縦横無尽に駆け巡る。そこには理解不可能しかない。
こういうシュールな作品、物語よりもヴィジュアル重視の作品の場合、いかにヴィジュアルの面白さに観客を引き込むかが重要視される。本作の場合、最後まで面白さが失踪します。竜頭蛇尾なんて言葉を知らないように。暗く、木々がわちゃわちゃしているのに、しっかりと誰が何をしているのかが認知できる。お城の上を歩く少女の、そしてうっかり城の屋上から落ちそうになるのを後ろの人物が引き止める様の美しさ。白い荒野に、白い馬と黒い馬が交差する様子のカッコ良さに、勢いよく遠くへ吹き飛ばされる人。トランスフォーマーもびっくり、自由自在に変幻し、小屋を我が物顔で歩く使い魔。
そもそもこれが原作もので、エストニアではベストセラーになった本の映画化という時点でエストニアのセンスのヤバさに卒倒しそうになります。
まあ、日本公開することはないでしょう。しかしながら、ライナル・サルネ監督のことは覚えておいた方が良い。そして、もしなんかの間違いで観るチャンスが降りてきたら、地を這ってでも、血を吐いてでも観た方が良い異次元の映画でした。
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