『ウルトラ・レーヴ』今旬のファンタスティック映画監督3本勝負!

ウルトラ・レーヴ(2018)
ULTRA RÊVE

監督:キャロリーヌ・ポギ&ジョナタン・ヴィネル、ヤン・ゴンザレス、ベルトラン・マンディコ
出演: Lucas Domejean, Nicolas Mias, Pablo Cobo etc

評価:61.66点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

アンスティチュ・フランセで開催されている「映画/批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~」に行ってきました。この特集上映では、フランスの映画メディア《Libération》のオススメフランス映画を上映するという企画となっています。その特集の一本で、2010年代を代表とするファンタスティック映画作家の短編集『ウルトラ・レーヴ』が上映されていたので観ました。

実は本作に収録されているベルトラン・マンディコの『アポカリプス・アフター』はmubiで既に鑑賞していて、ゲンナリした作品だったのですが、『Knife+Heart』のヤン・ゴンザレス監督作が収録されているということで行ってきました。果たして…

『ウルトラ・レーヴ』あらすじ

#1『アフター・スクール・ナイフ・ファイト』あらすじ

監督・脚本・音楽:キャロリーヌ・ポギ、ジョナタン・ヴィネル
レティシア、ロカ、ニコ、ナエルの4人は、最後の練習のために、空き地に集まった。レティシアが遠くへ進学するため、まもなく皆で集まる事はなくなる…。離れ離れになりたくない若者たちは…。16mm撮影。2017年カンヌ国際映画祭批評家週間出品作品。

#2『アイランズ』あらすじ

監督:ヤン・ゴンザレス
出演:サラ=メガン・アルシュ、トマ・デュカス、アルフォンス・メトルピエール、
欲望だけに導かれ、彼らはエロスと愛の迷路をさまよう。2017年カンヌ国際映画祭批評家週間出品作品。

#3『アポカリプス・アフター』あらすじ

見捨てられた海辺のリゾート。世界の終焉を描いたファンタジー映画影も終わった。撮影クルーの二人の女、女優と監督であるアポカリプスとジョイは、彼女たちの恋愛も終わらせようとしていた。2018年カンヌ国際映画祭批評家週間出品作品。


アンスティチュフランセ公式サイトより引用

ファンタスティックで胸焼けします

前日が会社の飲み会で、ハングオーバーだったブンブンにとって胃もたれを引き起こし、頭痛が強まるハードな3本でした。とはいっても、『アポカリプス・アフター』以外はなかなか面白かったです。

「映画/批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~」では他に『ジェシカ』が上映されるキャロリーヌ・ポギ、ジョナタン・ヴィネル監督の短編『アフター・スクール・ナイフ・ファイト』は、映画というよりかは、ファッションブランドの広告という印象が強い作品だ。寧ろ、本作を鑑賞後、ナイキのパーカーが欲しくなること間違いなしなので、広告としては満点のクオリティだ。将来のことなど分からず、悶々としている若者バンドが荒野にやって来る。赤パーカーの男の子は、ヴォーカルの女の子に惚れているが、なかなか思いを口に出せずにいる。他のメンバーは、人生をどう生きるかを悩んでいる。そしてヴォーカルの女の子が、「さあやるわよ」とブルーシートをひっぺ剥がし、『前前前世』さながらの野外ライブをするという内容。映画としては、輝ける青春、迷える思春期を20分に凝縮した短編とはいえ、物足りなさがあったのですが、赤パーカーの男の子が『SUN』という音楽に自分の甘い恋心をのせていくエモーショナルさ。また『SUN』を強調しているのに、全編《CROWDY》だったりする面白さも込みで、ブンブンは好きでした(甘めの75点)。

続いて流れた、メインディッシュ『アイランズ』は『Knife+Heart』の日本公開が楽しみになる傑作でした。『Knife+Heart』は予告編を観る限り、ブライアン・デ・パルマの『ボディ・ダブル』を意識したB級ポルノサスペンスという感じだが、本作を観るとゴンザレス監督の70年代ポルノ映画やグラインドハウス映画に対する造詣の深さ。そして、Z級に限りなく近い作風からアートに昇華させていく様の面白さを追求している雰囲気に好感を抱きました。男と女のハードなSEXシーンから始まる。突然、謎の男が男を張り倒す。その男は顔が焼けただれている怪物だ。何故か、女はそのモンスターに惹かれていく。そして気絶していた男も起き上がり3Pを始める。サイレント映画という静けさの中で騒々しい行為が行われていると思いきや、それが舞台たったという一つ目のオチがつく。ルイス・ブニュエルを思わせるシュールレアリズムなシチュエーション、それをラーメン二郎のように次々と要素を重ねていくのだ。この異様な劇を見ていたゲイカップルがムラムラし始め、巨大な女性の彫刻の前で弄り合い、それを無数の黒ずくめの男たちが観て興奮する。映画が持つ通俗性、見世物としての側面をシニカルに分析しているといえる。男女平等とか社会問題、政治性にうるさくなってきた映画界ではあるが、結局のところ面白半分で映画を観ているんだろ?だったら俗物を余すところ映すことで皮肉るよ。それがゴンザレス流の映画なんだからという意志が反映されていて、個人的には大満足の作品でした。ただ…オススメはしません(80点)。

そして最後に上映された『アポカリプス・アフター』について話すとしよう。ブンブンは、割と最近はカイエ・デュ・シネマの映画観とは相性が良い。潔癖症になってしまった映画界に対して、「不道徳の世界なくして道徳は成り立たない」という信念で、映画が持つ純粋な面白さを求めているところが共通しているのであろう。ただ、そんなブンブンもどうやらベルトラン・マンディコのファンタスティックな作風は相性が悪いようだ。『ワイルド・ボーイズ』に引き続き、本作も性描写を極限にまで醜悪に描いているのだが、どうも「性描写を前衛的に描いている俺ってかっこいいだろ」という姿勢が鼻につく。『アポカリプス・アフター』に関しては、エロ映画のタイトルを連呼し、ジャン・コクトーやマックス・オフュルスといった映画監督の名前まで引用しながら、モンスターや無機物にエクスタシーを感じる女優が描かれているのだが、単純に女性をマンディコ監督の性的消費の対象としか考えていない感じに腹が立ってきた。映画を単純に引用しまくる監督は確かにいる。ゴダールだ。しかし、ゴダールは映画と映画のフラグメントをつなぎ合わせることで別世界を生み出すのが面白いのであって、マンディコは単なる見掛け倒しなヴィジュアルレベルにとどまってしまっている。映画を引用して新世界を生み出せていた点で『アイランズ』とは雲泥の差のクオリティだったと思う(30点)

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