ゴールデン・リバー(2018)
The Sisters Brothers
監督:ジャック・オーディアール
出演:ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッドetc
評価:65点
ヴェネチア国際映画祭で監督賞を受賞し、フランスのアカデミー賞ことセザール賞で4部門(撮影、美術、監督、音響)を受賞したジャック・オーディアール最新作。『ディーパンの闘い』でパルムドールを受賞し、今やフランス映画界の重鎮になりつつあるオーディアル監督が、ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス主演に西部劇を作りました。しかも監督初の全編英語。ギャガ配給で7月に日本公開する本作を一足早く鑑賞しました。
『The Sisters Brothers』あらすじ
In 1850s Oregon, a gold prospector is chased by the infamous duo of assassins, the Sisters brothers.
ブンブン訳:1850年オレゴン、金を発掘する者は悪名高き2人組、シスターズ・ブラザーズに命を狙われる…
※IMDbより引用
エスカルゴ・ウエスタンここに現る
イタリア製西部劇がマカロニ・ウエスタン、和製西部劇がスキヤキ・ウエスタンと呼ばれるのであれば、本作はエスカルゴ・ウエスタンとでも呼んでおこう。ダルデンヌをはじめとした90年代以降のリアリズム系作家の一人ジャック・オーディアルはドキュメンタリータッチと一つまみの娯楽的演出のスパイスの塩梅に力のある監督だ。そんな監督が西部劇を撮った。それはよく見るドンパチ西部劇とは違うはずだ。かといって、懐古主義的古き良きアメリカを描いた人情西部劇でもない。どちらかというと、日本の伝統的な時代劇の様に、様式美に拘った西部劇に近い作品である。この歪さはまさしくエスカルゴ!といったところでしょう。
いきなり、素晴らしいショットから始まる。
真っ暗な空間で、男の声が聞こえる。バンバンバンとあちこちから火花が出ているのだが、観る者はその正体が掴めず不安になる。春節の花火の様な荒々しくも美しいアクションシーンから始まるのだ。そしてやがて、ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックスが正体を現し次々と人を殺めていく。撮影が見事で、ハリウッド西部劇ではなかなか観ることのできない、人物配置によって作り出す空間の面白さが滲み出てきます。
そして業火に燃える建物をバックに、《The Sisters Brothers》とタイトルが出る。非常にカッコいいオープニングから物語は始まります。
ジョン・C・ライリー演じる兄はもうガンマンを辞めたいと思っているのだが、ホアキン・フェニックス演じる弟チャーリー・シスターズは血に飢えている。そんな二人に舞い込んできた仕事。簡単だと思っていたのだが、ドンドン歯車が狂っていき、追う者から追われる者へと変わっていきます。チャーリーは「この血は、、、俺らがやったことは俺らがたまたま殺しが得意だったからなんだ」と語る。この作品は、たまたまガンマンとして凄腕だった者がオデュッセイアのような地獄旅を通じて許しと安らぎを求める話となっています。
非常にオーソドックスな話ではあるのですが、オーディアルお得意のリアリズム演出によって、19世紀における突然敵に狙われ、死の恐怖と対峙してしまう容赦なさを生々しく描くことに成功しています。晴天に恵まれ、空気が澄んでいて、楽園の様な場所ですら兄弟に安息させる暇を与えず、血みどろな地獄と化す。終盤にならばなるほど、ドライで苛酷な旅となっていくため、ハラハラドキドキしっぱなしの2時間でした。そして最後の最後に魅せるジョン・C・ライリーの姿に、大満足するのでした。
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