【ネタバレなし】ルカ・グァダニーノ版『サスペリア』ワケワカメだが超絶面白い5つの理由

サスペリア(2018)
Suspiria

監督:ルカ・グァダニーノ
出演:ティルダ・スウィントン、ダコタ・ジョンソン、ミア・ゴスetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

賛否激突しているリメイク版『サスペリア』。

町山智浩やクエンティン・タランティーノは絶賛する一方、元ネタの『サスペリア』監督であるダリオ・アルジェントはブチギレたとのこと。そんな『サスペリア』ようやく日本公開されたのですが、案の定賛否は分かれており、ブンブンの親友は試写で観て酷評でした。噂によると、近代ドイツ史、特にバーダーマインホフ周りの情勢を知らないと訳がわからないとのこと。ただ、実際に観てみると、バーダーマインホフ周りを少しかじったぐらいでは本当にワケワカメです。ただ、難解だからと敬遠するのは非常に勿体無い。映画館で観ないと絶対後悔するタイプの作品でした。また、アルジェント版以上に《決して、ひとりでは見ないではください》映画でもあり、《決して、自宅では見ないでください》案件でもありました。今回はネタバレなしで、これから観ようとしているものの、上映時間と難解さから敬遠している方の後押しになるような記事を書いていきます。ワケワカメだが超絶面白いぞ!

『サスペリア』あらすじ

《マルコス・ダンス・カンパニー》に入団すべく、アメリカからはるばるドイツにやってきたスージー。なんとか、オーディションに受かり入団することとなったのだが、彼女の周りで不可解な出来事が起こる…

ワケワカメだが超絶面白い理由1:Don’t think, Feel!

本作は、町山智浩をはじめ、日本の映画評論家がこぞって、「近代ドイツ史を知らないとキツい」ということで、バーダー・マインホフや東西ドイツ事情を隈なく調べ上げている。ではバーダーマインホフを知っていたら面白いのか?

ブンブンは高校時代に世界史を受講しており、その辺の時代をある程度勉強しています。またバーダー・マインホフは、映画『バーダー・マインホフ 理想の果てに』で勉強済み。しかし、断言しよう。

ちょっと何言っているのかわからない…

正直、付け刃的予習レベルでは、本作に暗号のように張り巡らされたドイツ史と現代との関連性は全く見えてきません。寧ろ、汁と麺が絡まないダメダメラーメンのようにしか見えません。ブンブンも毎日のように映画の解説・考察を書いているけれども、ここまでワケワカメな映画は久しぶりです。

だからこそ、これから観る人には、こう告げたい。

「考えちゃダメだ!」

本作は、そもそもダリオ・アルジェント版の『サスペリア』をグァダニーノ監督はやりたくなかったのでは?と疑惑を抱かずにはいられない作品です。それこそ、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの難解バーダー・マインホフ映画『第三世代』をやりたかったように見えるし、もっとわかりやすく言えば、デヴィッド・リンチ的世界。それもデヴィッド・リンチが『ツイン・ピークス The Return』の第3話、第8話で魅せたような観客を置いてけぼりにする欲望の暴走をやりたかったのではないかと思わずにはいられません。

だから、下手にアルジェント版やドイツ史のことを考えるよりも、グァダニーノ監督の巨大な手の上で転がされる様子を楽しむことをオススメします。特に、アルジェント版の『サスペリア』のことを考えて見ると、嘆息(ラテン語で”Suspiria”は《嘆息》の主格形容詞にあたります)してしまいますよ。

ある意味『ハンター×ハンター』な念と念のぶつかり合いが、とってもシュールでグロテスクで堪りませんよ(よくR-15で収まりましたね)。というよりかは、本作は『ハンター×ハンター』の幻影旅団にフォーカスをあてた作品そのものです。だから、『ハンター×ハンター』が好きなら絶対に観た方がいいです。

ワケワカメだが超絶面白い理由2:1にティルダ!2にティルダ!!3にティルダ!!!

君の名前で僕を呼んで』でルカ・グァダニーノ監督を知った人は、知らないかもしれませんが、グァダニーノ監督は大のティルダ・スウィントン好き。彼は映画を作るとき、とにかくスウィントンを配役しがちです。なんと彼の長編デビュー作『The Protagonists』から彼女は主演に抜擢されており、2002年には彼女の名前を題名にした短編映画『Tilda Swinton: The Love Factory』を発表しています。
さらに最近だと、ティルダ・スウィントンがロックミュージシャンとしてバカンスをエンジョイしているだけのぶっ飛んだ怪作『胸騒ぎのシチリア』を撮っています。完全に、ティルダ・スウィントンを撮りたいだけの映画になっており大草原不可避な作品となっていました。

さて、今回は『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』のピーター・セラーズのように、彼女に3つの顔を演じさせています。しかも、彼女が演じる役の一つにクレンペラー博士という爺さんがいるのだ。言われなきゃ分からない迫真の爺さん演技を彼女がしており、それだけで面白いです。つまりは、この映画、ダコタ・ジョンソンとかクロエ・グレース・モレッツなんかよりもティルダを観る映画なのです。

実際に、ダンスの鬼教師として君臨するティルダ様の圧倒的ボスキャラ感は非常に魅力的だ。なんなら、今『ハリー・ポッター』をリブートするのであればセブルス・スネイプ役は彼女で決まりかなとさえ思う闇の人間を好演していました。

ワケワカメだが超絶面白い理由3:今回はまじで、決して、ひとりで見ないでください案件

ダリオ・アルジェント版日本公開時のキャッチコピーは《決して、ひとりでは見ないでください》でした。このキャッチコピーは今での色あせることなく人々の心に刺さる、神キャッチコピーとして神格化されているのですが、実は本編はそこまで怖くなく、寧ろギャグ映画として一級品でした。しかし、このキャッチコピーによる刷り込みで、どうしても「怖い映画」というイメージが付きまといます。そのモヤモヤに対し、今回の再構築では決定的な答えを出しました。グァダニーノ監督は日本の観客のことなど考えていないのは明白ですが、今回のリメイクは間違いなく《決して、ひとりでは見ないでください》でした。

ブンブンのおばあちゃんが、インスタグラムにアップした本作のミニ評に対して「いいね!」を押していたが、真面目に止めたくなりました。「ばあば、それはひとりで見てはだめだ!心臓発作しても知らないぞ!」と言いたくなったのです。

というのも、本作は背筋が凍るほど怖い。サブリミナル効果のように、無数のグロテクスなシーンが唐突に差し込まれる。そして劈くような不快な音が映画を盛り上げる。そして、大本命なグロテスクな殺戮描写はくどいように画面で提示される。昨年釜山国際映画祭で鑑賞したラース・フォン・トリアー最新作『The House That Jack Built』と全く同じグロ描写になっていたのです(あちらも章立て構成で上映時間も150分程あります)。

念でぐちゃぐちゃになっていく人体、漆黒の闇が身体を奪う、『キングスマン』バリに爆発する人体、スローモーションで魅せていく人体破壊と兎に角、破壊破壊破壊のオンパレードにメロメロになってしまいます。

ワケワカメだが超絶面白い理由4:実は『オズの魔法使』説

元ネタの『サスペリア』もそうですが、実はこの作品は『オズの魔法使』の漆黒の現代リメイクとして考えるとわかりやすかったりします。旅の末に少女は、異世界にたどり着く。そして魔女の派閥争いに巻き込まれてしまうという話をバレエ教室のドロドロ派閥争いに置き換えているのだ。右も左も分からずバレエ教室にやってきたドロシーことスージーはブラン派とマルコス派の抗争に巻き込まれていくうちに自分も魔女になっていく話となっています。そう考えると少しは気が楽になります。身構えずに向き合うことができるでしょう。

ワケワカメだが超絶面白い理由5:エンドロールもかっこいいから観てね

実は、この作品全体的にヴィジュアルがカッコイイ映画なのですが、一番痺れたのはエンドロールの文字アートです。あまりのかっこよさに、ブンブンのブログのロゴを『サスペリア』リメイク版風にしてしまいました。

ちなみに、本作のエンドロールはなんとマーベル方式をとっています。別にトイレに行きたかったら、出ちゃって構わないとは思うのですが、エンドロール途中で、ボーナスカットが挿入されています。なので、本作を気に入った方は是非、最後まで席を立たないことおすすめします。

最後に

いかがでしたでしょうか?ネタバレになるところも多いので、口を濁して書きました。少しは本作に興味をもっていただけたでしょうか?本作は自宅で観たら、集中力が切れて、スマホに逃げてしまうかもしれません。それじゃあ映画体験としてあまりに勿体無い。こればかりは大スクリーンでグァダニーノの醜悪な美を堪能することを強くオススメします。

もう一度言います。

《決して、自宅では見ないでください》

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