『ワイルドライフ』ポール・ダノ初監督作はキャリー・マリガンを生々しく撮る胸糞ファミリー映画でした

ワイルドライフ(2018)
Wildlife

監督:ポール・ダノ
出演:キャリー・マリガン、ジェイク・ギレンホール、エド・オクセンボールドetc

評価:60点

俳優が、映画監督デビューするケースは割とあるが、ここ最近ブームになっているらしい。ブラッドリー・クーパーは『アリー/スター誕生』を撮り、アカデミー賞作品賞最有力候補となった。ジョナ・ヒルはスケボー青春映画『Mid90s』を撮った。そして、『スイス・アーミー・マン』、『オクジャ/okja』のポール・ダノは女優のゾーイ・カザンと一緒にリチャード・フォードの小説から脚本を練り、映画監督デビューを果たした。

『Wildlife』あらすじ

1960年代。父ジェリーは、出稼ぎ仕事でしばらくモンタナを離れることとなる。家族の反対を押し切り父が出て行ったことに息子ジョーは戸惑いを隠せなかった。しかし、彼を当惑させたのは、母が父の不在をいいことに清楚な女から豹変し、別の男と不倫するようになっていくことだった…

優等生的映画

本作は、いい意味でも悪い意味でも優等生な作品でした。これがポール・ダノ初監督だから海外やFilmarksで評価されているのであって、彼以外の人物が撮っていたら脚光浴びることなく埋もれていたことでしょう。本作は、ひたすらにドライなタッチを維持している。その荒涼とした作風が、倦怠期の厭らしさを増幅させている。そこにポール・ダノは、重厚な森林火災の描写を象徴させることで、映画にただならぬ不穏な香りを滲ませています。

そして、何と言ってもキャリー・マリガン、ジェイク・ギレンホール、エド・オクセンボールドが形成する家族の魅せ方が、初監督作に見えないほどスマートだ。まず、キャリー・マリガン。『17歳の肖像』の頃は、現代のヘップバーンだとチヤホヤされていた彼女だったが、ポール・ダノは容赦無く彼女の綺麗なベールを剥いていく。清楚でスマートな女性が、少し嫌いになってしまった夫がいなくなったその開放感から、下品な女性へと成り下がっていく様をじっくり、じっくりと描いてみせます。それを、『早春』のあの青年のように、童貞の眼差しでみるエド・オクセンボールド(『ヴィジット』のあの少年ですよ!)が素晴らしいアクセントとなっている。孤独で、親の愛を求める少年が、父に幻滅に、母にも幻滅していくプロセスのいたたまれなさを、慰めたくなるような愛らしい眼差しで演じてみせます。そして、ジェイク・ギレンホール。彼から滲み出る不器用ならではの哀愁さが、どうにもならない家族の終焉を強調していく。

ポール・ダノ監督は、ひょっとするとブラッドリー・クーパー以上に映画を大切に扱おうとしているのかもしれない。今後、巨匠になる方はポール・ダノかもしれないと思いながら観ていました。こうみると、ブンブンはこの作品高く評価しているじゃないか!と思うかもしれない。ただ、正直退屈してしまったのも事実。役者と監督というブランドゴリ押し映画の域を出ていないと感じました。でも、彼の次回作は積極的に追っていこうと思います。

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