ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ(2018)
原題:地球最後的夜晚
英題:Long Day’s Journey into Night
監督:ビー・ガン
出演:Tang Wei,Sylvia Chang etc
もくじ
評価:90点
今回の東京フィルメックス最大の目玉は、中国の新鋭監督ビー・ガン最新作である『ロング・デイズ、イントゥ・ナイト』であった。『凱里ブルース』で衝撃デビューを果たしたビー・ガン監督の2作目はなんと3D映画!しかし、ただの3D映画とは違う。映画の中盤でメガネをかけるのだ!前代未聞の試み、そして予告編を観てもさっぱり内容が分からない。ユージン・オニールの戯曲『夜への長い航路(Long Day’s Journey into Night)』とは関係あるのかすら分からない。そんな謎の映画を観てきました。※第19回東京フィルメックス学生審査員賞を受賞
『ロング・デイズ、イントゥ・ナイト』あらすじ
貴州省に戻ってきた男は、廃墟となった地を彷徨い、かつての恋を思い出す。あれは魅力的で素敵な女性だった。凱里から離れようとあの頃もがいていた。素敵な素敵な女性。しかし、記憶は残酷で、あの女の顔が思い出せない。そんな彼の1日が描かれる…これは中国にもあった『カメラを止めるな!』な話だ!
本作は、非常に説明が難しい映画だ。来年、日本で『凱里ブルース』と一緒に公開が決まった今言えるのは、「決して3Dになるタイミングについて語れない」ということ(これについては後日ネタバレありの記事で語ります)。あまりに素敵で、これから観る人の《驚き》を大切にしたいと思い、これだけは死守せねばと思った。そうなってくると、この物語について語るのが非常に厄介となってくる。描きすぎると勘のいい人には分かってしまうからだ。
そんな『ロング・デイズ、イントゥ・ナイト』をネタバレしないレベルで語ってみよう。まず、本作を観て感じたのは、『カメラを止めるな!』に近い構造の作品だということ。『カメラを止めるな!』では、前半30分のワンカットC級ゾンビ映画が伏線となって後半の笑いに繋がってくる。本作は、前半の断片的詩的男の回想がヒントとなって、ワンカット3Dパートで次々と謎が解明されてきて観客に高揚感を与える仕組みとなっている。映画のテイストこそ180度違うが、メカニズムは非常に近い。
そして、どちらも前半の種まきが見事な為、中盤から観客の好奇心を揺さぶりまくることとなる。
『ロング・デイズ、イントゥ・ナイト』の前半は確かにキツイ。ウォン・カーウァイかぶれなタッチ、ナルシズム溢れるカメラワークと語り口に落胆する。これは期待外れだと。しかも、内容も映像が凄すぎて全く頭に入ってこない。男は、かつての女を探しているらしいぐらいしか分からないのだ。また、「映画はシーンとシーンの繋がりを意識されているが、記憶は曖昧だ」と露骨に映画論を語り始める。これが前半80分、まさに映画1本分も展開されるのだ。徐々にビー・ガンのテンポに慣れてきて面白くはなってくるものの、見掛け倒しな映画に見える。
『夜への長い航路(Long Day’s Journey into Night)』との関連性
ネットで調べると、上位に本作と同名の戯曲『夜への長い航路(Long Day’s Journey into Night)』が出てきます。この戯曲はユージン・オニールがピュリッツァー賞を受賞した自伝的戯曲であり、落ちぶれた役者ジェームズ・ティロンと麻薬中毒の妻メアリーとその間の2人の息子の愛憎を描いたもの。元々はの公演は、朝の8:30から深夜にかけて行われました。
調べてみる限り、全くの別物ですね。ただ、本作は明らかに演劇的手法がとられているので、意識しているのは確か。恐らく、この戯曲が持つ自己分析の観点と、その自己分析に対して観客を没入させるには?という命題を引用したのだと思われる。
最後に…
非常に歯がゆい記事となりましたが、ネタバレなしではここまでしか語れません。来年日本公開するので、それまでは首を長くしてお待ちください。
※『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』という邦題で2020/2/28(金)より公開決定しました!
コメントを残す