【クラシック】「市民ケーン」当時としてはマッド過ぎる作りだよな~

市民ケーン(1941)
CITIZEN KANE(1941)

監督:オーソン・ウェルズ
出演:オーソン・ウェルズ,
ジョゼフ・コットンetc

評価:85点

映画史の教科書に必ず出てくる作品「市民ケーン」。アメリカ映画のオールタイムベストでは常に、「めまい」か「市民ケーン」かと1位の座を争うほど不朽の
名作として名高い作品。ただ、ブンブンが中3の頃、映画検定に受かるために観たときは、「結構普通の映画じゃね?」と思ってしまった。

さて、あれから7年の時を経た今観てみるとどう感じるのだろうか?Let’s BEGIN!

「市民ケーン」あらすじ

新聞王で大富豪のケーンが死亡した。すぐさまニュース映画が作られるのだが、編集者のトムスンは彼の人間性にさらに迫りたいと考え彼の最期に残した言葉「バラのつぼみ」の真相を追う…

演出がトリッキーすぎる

オーソン・ウェルズと言えば、「黒い罠」での超長回し、クレーンまで使用するオープニングや「フェイク」の後半で判明するやらせ演出など、かなりトリッキーな演出をする監督で有名。そんな彼のフィルモグラフィー史上最もビザールな技巧を魅せたのが本作なのだ。

ポイント1.冒頭のモンタージュ

冒頭、ケーンの所有する城が様々な角度で断片的に映し出される。まるで「ドラキュラ」か何かが出そうな雰囲気。

風景もドイツ表現主義の「カリガリ博士」や「吸血鬼ノスフェラトゥ」を彷彿させる、いびつさがある。

なのに、次のシーンではニュース映画が展開され、急に何事もなくヒューマンドラマが始まるからとっても変な作りをしている。

ポイント2.ニュース映画

劇中劇とか、劇中ニュース映画って普通長くて1分ぐらいですよね。「市民ケーン」はしっかり、ケーンの人生について10分ぐらいのニュース映画を作っています。しかも、実際にありそうなニュース映画つまりドキュメンタリーと言っても過言ではない程のリアリティがあります。

ポイント3.並行進行

本作はケーンの人生と、編集者の調査シーンを交互に描いている。

これだけなら、1916年の時点で「イントレランス」が同じ事をしているのだが、「市民ケーン」は時間も過去に巻き戻したりし、かなりグチャグチャに入れ替えてある。

ポイント4.パンフォーカス

映画の技術書には必ず手本として載っている「市民ケーン」のパンフォーカス技術。パンフォーカスとは、遠くにカメラの焦点を合わせたり、画面の明るさをめっちゃ明るく
することで、画面全体にピントを合わせる手法。

エイゼンシュタインの「メキシコ万歳」や「嵐が丘(1939)」などでも使われているので、世界初ではない技術だが、ここまで頻繁に且つ効果的に使われたのは「市民ケーン」が初じゃないだろうか?

実は「ウルフ・オブ・ウォールストリート」の対局にある作品

本作は、親元を離れて一匹狼で育った男が社会を挑発しながらも大富豪の頂点へとのし上がっていく作品。観ていて、何かに似ているなーと思ったら、スコセッシの「ウルフ・オブ・ウォールストリート」とそっくりでした。

しかし、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」は過去を顧みず常に猪突猛進クレイジーっぷりが発揮されっぱなしの作品だったのに対し、「市民ケーン」は挑発的行動の裏に隠された心の闇が見える哀しい映画となっている。なんたって、ラスト「バラのつぼみ」の真相について社会は誰も気づけず闇に葬られるシーン。

ケーンにとっては、「幼少期」=「母親の愛」を象徴するフレーズだったのに、社会から無視されてしまう侘しさがそこにはあった。また、ケーンは晩年歌手のスーザンのことが
好きになり束縛男へと豹変する。これは、ケーンがお金を出しても買うことの出来ない母性愛をスーザンに求めていたからだと分かる。

「華麗なるギャツビー」のように一見大富豪で幸せそうな一人の人物が、実は個人で闇を抱えていた話なのだ。

故に、冒頭の幽霊城のようなシーンではケーンの心の闇を表していて、ニュース映画→編集者の調査→ケーンの半生と物語を繋げていくことで、彼の真相が分かってくる
非常にテクニカルな作品でした。

今観ると超面白かったです♪

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です