パーソナル・ショッパー(2016)
Personal Shopper
監督:オリヴィエ・アサヤス
出演:クリステン・スチュワート、
ラース・アイディンガーetc
評価:70点
オリヴィエ・アサヤスがホラー映画に挑戦!ということで話題となり、カンヌ国際映画祭では監督賞を受賞した作品『パーソナル・ショッパー』。しかしながら、日本公開時には、オシャレさんやカップルにマーケットを絞り、魅惑のファッションドラマとして予告編が作られた。そして、うっかり観にきたオシャレ女子やカップルが、不意打ちのホラー描写に恐れおののいたことで話題となった。実は、日本公開時、予算の関係で観逃していた。
『パーソナル・ショッパー』あらすじ
セレブの代わりに買い物をするパーソナル・ショッパー。彼女は兄を亡くしており、哀しみを押し殺して生きていた。ある日、スマホに謎のメッセージが届き…不意打ちゴシックホラー
本作は、黒沢清や濱口竜介を思わせる日常がだんだん侵食される系ホラーでした。とはいっても、彼らと比べてオリヴィエ・アサイヤスはホラー慣れをしていないのか、ヴィジュアルに拘りがない。やる気なさそうでチープなホラー、それこそ『回転』の時代の工夫によるホラー演出をCGに頼るレベルのやる気なさで全編が展開される。それが、妙なリアリティを生み、ゾクゾクとする恐怖を演出する。
そんなアサイヤス本作における、最大の面白さはスマホ描写だ。孤独な人間はスマホに逃避する。会話をしないという2000年代以降の人々のライフスタイルを映画に投影させるためスマホを有効活用している。スマホに届いた謎のメッセージ。パーソナル・ショッパーは、そのメッセージに惹き込まれるように電車に乗っている最中、会話さながらのスピードで謎の人物と対話する。それこそ「ホラー映画は嫌いかな」みたいなたわいも無い話をしている。するといきなり、ヴーヴーと着信がなるのだ。スマホ操作中にかかる電話は本当にドキッとするもの。『着信アリ』で肝心な着信描写が怖くなかったあの時代に対し、アサイヤス監督が「これが本当の『着信アリ』だ!」と叫んでいるような秀逸ホラー描写だ。
決して万人受けしない作品。普通のオシャレ映画だと思って観るとビザールなホラー描写に阿鼻驚嘆し、ホラー映画として観ると物足りない。しかしながら、変わりモノ好きな人には刺さる逸品でしょう。
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