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【ネタバレ】『プーと大人になった僕』ニート推奨映画ではない!パラノイア克己映画だ!

【ネタバレ】『プーと大人になった僕』ニート推奨映画ではない!パラノイア克己映画だ!

プーと大人になった僕(2018)
Christopher Robin


監督:マーク・フォスター
出演:ユアン・マクレガー、ヘイリー・アトウェル、マーク・ゲイティス
日本語吹替:堺雅人、かぬか光明、玄田哲章etc

評価:80点

↑アレックス・ロス・ペリー作品の予告編。日本では全く公開されていないが、どれも面白そうだ。

薄汚れた、ぬいぐるみ、退廃的な世界観、「それは風船よりも大切?」「僕は毎日《何もしない》をしているよ」といった意味深な台詞により公開前から話題となっていた『プーと大人になった僕』。中には、脚本家がディズニー映画と相性が悪い癖と毒が強い作風のアレックス・ロス・ペリーが担当していることから、不安にかられる者もいた。

ブンブンも、映画全体から漂う、ただならぬホラーの薫りに導かれるかのように、そしてぬいぐるみと堅い絆で結ばれていることもあり、期待して映画館へ行った…

『プーと大人になった僕』あらすじ

クリストファー・ロビン(47):運送会社カバン部門部長。彼の会社はブラック企業!業績不振でリストラクチャリングの波が押し寄せ、従業員の20%を削減せざる得なくなった。折角の家族との休暇も、休日出勤命令により行けなくなってしまう。頭を抱える彼はパラノイアを発症。彼の前に、昔愛していたぬいぐるみプーたちの幻影が現れ、こう語るのだった…それは風船よりも大切…

ディズニーの仮面を被ったパラノイア克己映画だ

本作は、確かにホラーだった。というよりかは、社畜生活によりパラノイアに陥った中間管理職が、妄想の淵で困難を乗り越えて行く物語だった。なので、子どもが観ると「プーさん可愛い」で終わってしまうのだが、大人が観ると、涙なくして観ることができない熱い作品となっている。そして、何と言っても本作は、プーさんの怖さが最大の魅力である。クリストファー・ロビンは、寄宿舎に入る際にイマジナリーフレンドであるプーさんたちに別れを告げた。そして兵役、結婚、そして就職を経て、今や大企業の1部門の部長になった。家族を持ち、大企業で働いている彼は幸せになったか?答えはNOだ。資本主義の奴隷のように、社畜生活を強いられていたのだ(日本の社畜生活よりかはマシそうだが…)。そんな彼の生活の裏で、薄汚れたプーさんたち物語が始まるのだが、これがなかなか怖い。負のオーラを宿している、プーさんは、毎日のようにクリストファー・ロビンのアジトに行く、そしてしょんぼりして帰る。しかし、ある日、ピグレットやティガーなどといった仲間が行方不明になってしまい、途端に「クリストファー・ロビンに会いたい!」と強く願うようになるのだ。しかし、100エーカーの森からロンドンまで遠く離れている。プーさんがやって来れる訳がない!と思ったら、ドクター・ストレンジもびっくり!空間を捻じ曲げて、ロンドンにやって来てしまうのだ。そして、クリストファー・ロビンと再会するや否や、「僕は毎日《何もしない》をしているよ」「100エーカーの森へ行こう」と円らな瞳で誘惑しまくり、彼を苦しめるのだ。大人が観ると、この悪夢とてつもなく怖い。そして、彼の様子を心理学の観点から観ると、防衛機制の話になっていることが分かる。クリストファー・ロビンは、不満を心の奥に押し込め《抑圧》することで、自分が壊れないようにしてきた。しかし、《抑圧》して来た不満が心の箱から溢れ出そうになったところに、幻覚として、かつて大切にしていたプーさんたちとの思い出がフラッシュバックする。プーさんたちによる幻影は《逃避》の道、《退行》の道という誘惑でクリストファー・ロビンが社会不適合者として道を踏み外すことを心待ちにする。その誘惑の渦の中で、いかにしてクリストファー・ロビンが自分と向き合って困難を乗り越えていくのかを本作は描いているのだ。だから、本作はただのニート推奨映画ではなかった。資本主義の波に溺れた者が、共産主義に逃避していく話でもなかったのだ。


↑鑑賞後、実家にあるぬいぐるみが少し怖くなりましたw

ディズニーらしいラスト。これは経営者に観て欲しい

本作が、もしディズニー映画でなかったら、バッドエンドになりそうだ。しかし、これは老若男女、全世界の人に向けた映画なのできちんとハッピーエンドになっている。そして、このハッピーエンドがとても素敵で、全経営者に観て欲しい者があった。

部署のリストラクチャリング。それこそ部署の20%人員削減を命令されたクリストファー・ロビンは最後の最後で良い解決策を見つける。それは誰も解雇しない方法だった。その解決策とは、「従業員に有給休暇を与える」ということだった。そもそも、何故彼の所属するカバン部門の売り上げが悪かったのかというと、人々が仕事に追われてバカンスにあまり行かなくなったことだ。また、この部署が販売するカバンは富裕層にマーケットを置いている為、非常に単価が高かった。クリストファー・ロビンは、金では富裕層に負けるが、人数では圧倒的に庶民の方が多いことに目をつけた。また、彼の会社が大企業で支社も多いことに目をつけた。従業員それぞれに有給休暇を与える。そうすることで、人々は旅行をするようになる。それをムーブメントにする。カバンも庶民向けのリーズナブルなカバンを作れば経済が回ることに気づいたのだ。

金があっても、時間がなければ金は使えない。日本の多くの企業が結構忘れてしまっているが、有給休暇は経済を回すのに非常に重要なのだ。本作は、有給休暇が経済にとっていかに大事かを教える素晴らしいクライマックスを仕掛けていたのだ。

これは、日本の経営者に是非とも観ていただきたい。

『グッバイ、クリストファー・ロビン』と一緒に観よう

来月、日本未公開の同じくプーさんを扱った作品『グッバイ、クリストファー・ロビン』がビデオスルーとなるのだが、是非とも併せて観てほしい。『グッバイ、クリストファー・ロビン』を観ると、当時の寄宿舎がいかに厳しいか、クリストファー・ロビンはなんで暗い暗い人になってしまったのかがよく分かります。また、『くまのプーさん』の原作が誕生した裏で、壮絶な悲劇が巻き起こっていたことに驚くことでしょう。

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