【ヴェネチア国際映画祭】『運命は踊る』ヴィジュアル重視過ぎて物語が置いてけぼりに…

運命は踊る(2017)
FOXTROT(2017)

監督:サミュエル・マオズ
出演:リオル・ルイ・アシュケナージ、サラ・アドラー、
ヨナタン・シライetc

評価:30点

イスラエルの鬼才サミュエル・マオズ最新作『運命は踊る』が9/29(土)からヒューマントラストシネマ有楽町他にて公開される。サミュエル・マオズは、自身の従軍体験を基に作った全編戦車の照準視点映画『レバノン』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。監督2作目にあたる本作では、同祭の審査員特別賞を受賞した今注目のイスラエル出身監督だ。Air Canadaの機内エンタテイメントで一足早く鑑賞しました。果たして…

『運命は踊る』あらすじ

イスラエル・テルアビブ。軍人が息子の訃報を伝えに家に来た。母親はあまりのショックで気絶。父親は驚きを隠せなかった。しかし、それは誤報だった…。一方、息子は滅多に人が来ない僻地で仲間たちとダラダラとした日々を過ごしていた…

ヴィジュアル重視過ぎて物語が置いてけぼりに…

本作は3部構成となっており、第1部では息子の訃報騒動で揺れ動く家族の心情を描き、第2部では戦地での息子の様子を描く。第3部で再び、家族の様子を描く仕組みとなっている。

原題の“FOXTROT”とは社交ダンスのスタイルの一つで4分の4拍子の速いテンポで踊るものだ。本作は、まるで”FOXTROT”のようにどう足掻いても元のポジションに戻ってしまう、運命に抗えぬ物語という意味と”FOXTROT”のようにカッコ良くヴィジュアルをキメるという二つの意味があるようだ。

しかしながら、ブンブンには後者のイメージが強烈過ぎた。サミュエル・マオズ監督は、恐らくヴィジュアルを決めてから映画を撮るタイプなんだろう。『レバノン』の時に既に感じていたことだが、本作ではそれがより一層濃くブンブンの目に映った。第1部では、訃報を受けてからの母と父の態度と、誤報を受けてからの態度を綺麗に逆転させることによって、メビウスの輪のようなものを作り出した。第2部では、不条理を表現する為に、アジトを傾けたり、まるでダリの『記憶の固執』のような構図で撮影されていたりする。しかしながら、面白いのはヴィジュアルだけ。話の中身自体は、各40分もかけて描くほどの物語ではなく、どれも「それで終わりなの?」と拍子抜けしてしまうものだらけだ。特に問題なのは第1部。公式のあらすじ紹介にも語られていることなのでネタバレではないのだが、息子の死を知り家族が動揺する中で、誤報だったという知らせを受け、さらに動揺する。これだけで第1部は終わりなのだ。確かにあまり映画ではみない展開なのだが、あまりにも最初に閃いたアイデアを未加工のまま魅せられている感じがして物足りなさを感じる。”FOXTROT”の動きを意識したヴィジュアル作りに拘るのはいいが、家族を動揺させるだけで他のアクションを盛り込まないのは流石に問題だと感じる。やはり、誤報を知って、その先が重要なのだ。確かに第3部で、その先は描かれているのだが、あれだけヴィジュアルに拘っていた第1部、第2部と比べると、やる気のない画とイジケテいる会話だけの構成になっている為全く映画として盛り上がる事なく肩透かしで終わってしまう。圧倒的ヴィジュアルの面白さでヴェネチアを制した感が否めず、実にハリボテな作品でした。

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