【ネタバレなし】『パディントン2』ウェス・アンダーソンか!ギミックの手数に大満足!

パディントン2(2017)
PADDINGTON 2(2017)

監督:ポール・キング
出演:ヒュー・ボネビル、
サリー・ホーキンス、
ヒュー・グラント、ベン・ウィショーetc

※前作の『パディントン』のレビューはこちら

評価:70点

世界中で愛されているマイケル・ボンドの児童文学作品『くまのパディントン』の映画化第2弾。前作は、フランス留学中に観てあまりの酷さにその年のワーストテンに入れた(ブログで酷評したせいか、日本公開まで1年近くかかった)。しかし、日本公開してみると、移民の生きづらさを象徴した傑作だとの声が相次いだ。個人的には、移民問題に対するメッセージ性を加味しても、救いようがないぐらい無茶苦茶をやっているのに何もお咎めなしな前作は好きにはなれない。

さて、今回その第2弾が公開された。何故かROTTEN TOMATOESでは、『トイ・ストーリー2』を超える歴代最高の高評価レビュー数となっている。確かに予告編を観ると、前作とはテイストを変えてきており、まるでウェス・アンダーソン作品のような感じだ。

不安と期待を抱きつつ、TOHOシネマズ上野で観てきた…

『パディントン2』あらすじ

ブラウン一家に引き取られ、すっかり家族の一員となったパディントン。パディントンは、ルーシーおばさんに恩返しをしようと思う。骨董品店にあった飛び出す絵本を買うためにアルバイトを始めるパディントン。そんなある日、その飛び出す絵本が盗まれてしまう。パディントンは強盗犯に間違えられ刑務所にぶち込まれてしまう…

まさに「飛び出す絵本」

本作は「飛び出す絵本」が中心に動く物語故か、飛び出す絵本を意識してギミックをねじ込みにねじ込んでいる。このギミックの多さに惚れ込まないわけがない。

例えば、軽いジャブで、パディントンが飛び出す絵本を読んでルーシーおばさんとの再会を想うシーンがある。それを飛び出す絵本の中に入り込んで、ページを捲るように物語を進めていく。この手の込んだ演出だけで、本作は傑作であると分かる。

またパディントンが窓拭きアルバイトをする場面。パディントンの力では水を入れたバケツを持ち上げることができない。そこで、紐を使って擬似滑車を作る。ハシゴを使って上から全体重を紐にかけてバケツを上の階に持っていこうとするのだが、体重<バケツなので、バケツは持ち上がらない。そこで、隣にあった植木鉢を持つ。そうすると体重>バケツとなり、バケツは上へと上がる。この試行錯誤する過程は、子どもに見せたいと思う程。非常に教育的な内容となっている。

このような手の込んだギミックが5分に一度登場する。大人ですら、ワクワクが止まらない。もはや移民問題云々以前に、この映画は楽しいから傑作だと思わせてくれる。

では今回の裏テーマはどうかというと、前作と比べて移民問題に関する鋭い視線がある。特に自警団の男と町の人々との関係性の描き方は鋭い。前半部分ではパディントンを差別する自警団に対し、周りは冷ややかな目で見る。しかしながらパディントンが逮捕されると、世間は自警団によって操作され、心の奥では、パディントンは無実だと思っていつつも、世間体を気にしてブラウン家とは距離を置く。その世間の冷たさを、雪景色の冷たさにリンクさせて描いていくあたりは非常に効果的であった。

また、この移民テーマの骨格を強固なものにするために、刑務所のシーンに力を入れているところがこれまた良い。怖そうな人が実は…という描写を嫌と言うほど挿入することで、人々は見かけで判断してしまうことが移民への差別に繋がっていることを暗示している。

前作で移民問題のテーマに気づけなかった私が言うのもどうかと思うのだが、本作は演出面でも物語面でもよくできていた。現代社会に対して問題提起をしつつもエンターテイメント作品としてこれ以上にないワクワクを与えてくれるのでブンブン大満足でした。

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