【クラシック】『霧の中の風景』は壮大な「はじめてのおつかい」だった!

霧の中の風景(1988)
原題:Τοπίο στην ομίχλη
出演:Landscape in the Mist

監督:テオ・アンゲロプロス
出演:タニア・パライオログウ、
ミカリス・ゼーナetc

評価:90点

先日、映画プレゼン大会に参加してきました。お題は「冬に観たくなるオススメ映画」。本当はクリスマス映画になる予定が、クリスマス映画…ねぇとなり急遽冬に観たくなる映画へとテーマは拡大しました。しかし、意外と冬映画って思い浮かばない。ブンブン、悩みに悩んだ挙げ句、テオ・アンゲロプロス監督の『霧の中の風景』を選びました。

『霧の中の風景』あらすじ

12歳の少女ヴーラは弟のアレクサンドロスを連れて列車に乗る。ギリシャからドイツを目指す彼女たちの目的はただ一つ。名前も顔も知らないお父さんに会うこと。彼女の旅を通じ、1980年代のギリシャ史が紡ぎ出される…

超壮大な「はじめてのおつかい」

まず、テオ・アンゲロプロスの『霧の中の風景』をTSUTAYAで借りようという方は、監督名に惹かれた厨二病(私がまさにそう。中学時代にテオ・アンゲロプロスに嵌まったw)か戦闘力5万レベルのシネフィルしかいないだろう。

ただ、実際に観てみると、本作は超壮大なはじめてのおつかい、もといエクストリームはじめてのおつかいで大草原不可避案件なのだ。

12才の少女ヴーラちゃんは5才の少年アレクサンドロスくんと、父親に会いに、ギリシャからドイツを目指す。

事もあろうことか、2人は父親の名前も顔も知らない。ドイツのどこに住んでいるのかも知らないのだ。エクストリームですねぇ。

お金もねぇ、知識もねぇ寒空雪道ぐ〜るぐるな2人のミニミッションも壮絶。無賃乗車や無銭飲食はモチのロン!エクストリーム大雨ヒッチハイクも敢行する。

通常、ロードムービーと言えば青年や大人が旅するので、寅さんですら安心感がある。しかし、こうも無謀な2人を観ると終始ハラハラドキドキの連続だ。

さらに撮影演出が美しく、ポリスマンがマネキンチャレンジしている雪道を駆ける2人のシーンは真似したくなる程。

旅行に行きたくとも仕事が忙しく行けないこの季節にぴったり、雪とロードムービーのマリアージュと言えよう。

最大の謎。あの手はなんだ?

本作を観た人なら誰しもが疑問に思うヘリコプターに吊される手の描写。アンゲロプロス監督の『ユリシーズの瞳』でも似たような描写があったが、あれはどうやらレーニン像の片割れだそうです。さりげなくアンゲロプロス監督は東欧の社会主義もとい旧ソ連の体制をアートという暗号で批判していたのではと考えることができます。

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