勝手にふるえてろ(2017)
監督:大九明子
出演:松岡茉優、渡辺大知、北村匠海etc
評価:80点
映画ファンの集いで評判高かったので急遽観に行きました。
『勝手にふるえてろ』あらすじ
綿矢りさの同名小説を映画化。中学時代から、イチのことが好きで社会人になってからも彼に想いを馳せていた。そんな彼女に会社の同期「二」が告白してくる。正直タイプではない。しかし、彼女は妄想のカレシと現実のカレシどちらを取るか悩みはじめてしまう…思わぬ傑作!
東京国際映画祭の時から合わないだろうなと毛嫌いしていた。確かに、綿矢りさは島田雅彦が賞賛している作家の一人だけに、興味ある。しかし、予告編を観ると、どうにも肌が合わなそうだ。恐る恐る私は映画館へ足を運びました。そしたら、これが中々の傑作。久しぶりに三木聡のような映画を観た!という感じでした。
松岡茉優扮する喪女が延々に落語調で恋の一人相撲するだけなのだが、このギャグの切れ味が痛々しくそして思わず笑ってしまう。次々と召喚されるアクの強いキャラクター、二に片桐はいりに古舘寛治に笑いを休める暇がありません。
原作は未読なのだが、シエスタのある職場、アンモナイトの異常巻とボキャブラリー、インスピレーション掻き立てられる語彙とセンスに圧倒される2時間でした。
また本作はただ勢いで押し切る映画ではないことを言っておきたい。今まで一途の片想いだった女が、どうでもいい男にコクられる。妄想のカレシか、現実のイマイチカレシか苦渋の選択を強いられる彼女の葛藤は心が痛くなるもの。特に現代社会では、映画やドラマで描かれるラブストーリーの大半はイケメンと美女しか出てこない。ブスだったり、醜男、フツメンは恥だと言わんばかりにきらきらとした恋模様が世の中を包んでいる。私も、この手の恋愛に悩まされたことがあるので、よしかの苦悩はよく分かる。そして、その苦悩をミュージカル調シュルレアリスムな空間で包みきった大九明子の技量、そして松岡茉優の怪演に拍手喝采したくなりました。
大九明子のフィルモグラフィーを見るとまだ、色物インディーズ映画ぐらいしか撮っておらず、シネフィルからもあまり注目されていない。しかし、今後さらなる化け物映画を作りそうな予感がする。
先入観に囚われずチャレンジして正解でした。
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