【TIFFネタバレなし】『シェイプ・オブ・ウォーター』金獅子受賞!デルトロが放つ聲の形

シェイプ・オブ・ウォーター(2017)
THE SHAPE OF WATER(2017)

監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:サリー・ホーキンス、
サリー・ホーキンス、
マイケル・シャノン、
リチャード・ジェンキンス、
ダグ・ジョーンズ、
マイケル・スタールバーグ、
オクタヴィア・スペンサーetc

※ネタバレ記事「【TIFFネタバレ】『シェイプ・オブ・ウォーター』のミュージカル映画シーンについて考察」はコチラ

評価:60点

先日行われたヴェネチア国際映画祭で、映画ファンを驚かせた。

それは、オタクの味方、『パシフィック・リム』大先生ことギレルモ・デル・トロ監督最新作が、フレデリック・ワイズマン『Ex Libris: THE New York Public Library』やパルムドール受賞監督アブデラマン・ケシシュ『Mektoub My Love: Canto Uno』といった強豪を倒し最高賞にあたる金獅子賞を制したのです。

同映画祭で脚本賞を制した『スリー・ビルボード』と共にアカデミー賞レース入り確実と言われる本作ですが、どうやら半魚人と聾唖者のラブストーリー、それも18禁レベルだと言う。どうしてこんなトリッキーな作品が、シネフィルの心を動かすのか?昨日、東京国際映画祭でその真相に迫ってみました。

『シェイプ・オブ・ウォーター』あらすじ

1962年。東西冷戦まっただ中。航空宇宙センターで働く聾唖者のエリザは、研究所に搬入された半魚人と恋に落ちる。その半魚人は、研究対象としてむごい拷問を毎日のように受けていた。見かねたエリザは、自宅に匿うことにする…

これぞ映画愛!

本作は映画好きの心をくすぐる作品だ。冒頭、聾唖者の女エリザの生活が映し出される。大きく格式の高い映画館の真上にエリザは住んでいる。そして1920年代のパリ、そう『ミッドナイト・イン・パリ』を思わせる芸術、インスピレーションの塊な町並みに、一気に惹き込まれます。そして、いきなりの18禁シーン(こればかりは実際に劇場で観て確かめて欲しい)に笑いがこぼれ、観客のわくわくを維持したまま研究所へと誘われる。
研究所は、まるでジュール・ヴェルヌ映画、それこそ『海底二万マイル』や『悪魔の発明』を思わせるゴテゴテとした造型で、まるで遊園地に来たかのよう。こんな映画少年のおもちゃ箱のような舞台装置で、金獅子賞もののドラマが繰り広げられるのかと驚き驚きの連続です。

意外と普通

駄菓子菓子、観ていくうちに違和感が生じてくる。それは、確かに面白いんだけれども、これで金獅子、これでアカデミー賞?と思う程、ヴァカンスシーズンに公開される一般娯楽作品と大差ないような作品に見えたのです。

半魚人と恋に落ちた聾唖者が、彼を自宅に匿う。悪い管理人がソレを追う。そこにロシアスパイが絡んでくる。どうも東西冷戦と、本作の主軸がかみ合っていないように見えた。フランコ政権下の地獄を少女の妄想目線で描いた『パンズ・ラビリンス』と比べると、全力で褒めることはできない。ってことで意外と可もなく不可もない系の作品でした。

アカデミー賞レース主演女優賞は「沈黙」バトルだ!

次のアカデミー賞の役者賞ノミネートは、本作から沢山出るでしょう。『ドリーム

』に引き続き、航空宇宙センターで働く肝っ玉レディを演じたオクタビア・スペンサーのこれまた笑えて熱い演技には、何人たりとも惹き込まれないわけがない。そして、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』でも半魚人役を務めたダグ・ジョーンズの本能の塊な演技も熱い。そして悪役マイケル・シャノンの、家族との幸福を夢見て汚れ仕事を引き受ける、全力で出世しようとする人間味溢れる演技も心動かされます。

そして、、、そしてなんと言ってもサリー・ホーキンスの演技が凄まじい。マイク・リー監督作で修行し、『ブルー・ジャスミン』で助演女優賞にノミネートされた彼女。今回のアカデミー賞では確実に主演女優賞にノミネートするでしょう。東京国際映画祭で上映された『スヴェタ』の聾唖者とは違い、手話と身体パフォーマンスの結びつきを意識し、まるでミュージカル映画のようにスクリーンを飛び回る彼女に涙が出てきます。もちろん、『スヴェタ』や『ザ・トライブ

』といったホンモノの聾唖者を起用した映画と比べるとリアリティに欠けるところもあるのだが、ファンタジー映画としてミュージカル映画として彼女の演技を観ると非常に素晴らしかった。

ただ、今回のアカデミー賞には『A GHOST STORY』という作品でこれまた劇中数カ所しか台詞がない役を演じたルーニー・マーラがノミネートされそうな感じがします。もしかすると、主演女優賞をルーニー・マーラとサリー・ホーキンスが奪い合う、「沈黙」のバトルが繰り広げられそうです。

日本公開は2018年3月1日。丁度アカデミー賞シーズン。映画を観た感じ、R-18というよりもR-15な作品。まあ結構グロくて、官能描写も激しいのでそれぐらいのレイティングで公開されることでしょう。日本では昨年『映画 聲の形

』が話題になったが、ギレルモ・デル・トロ監督が放つ聲の形もなかなかだ!是非劇場でウォッチしてみて下さい。

おまけ:予習に観ておくといい2本

本作を観る前に、『大アマゾンの半魚人』と『マイ・フェア・レディ』を観ておくことをオススメします。ネタバレになるので詳しくは語りませんが、この2作品の影響を強く受けているとだけ言っておきます。

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