ノン、あるいは支配の空しい栄光(1990)
原題:NON’, OU A VA GLORIA DE MANDAR
英題:NO, OR THE VAIN GLORY OF COMMAND
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:ルイス・ミゲル・シントラ、
ディエゴ・ドリアetc
評価:80点
ブンブンが今嵌まっている映画監督にマノエル・ド・オリヴェイラがいます。彼はポルトガル映画界の巨匠で、100歳を超えても映画をコンスタントに撮り続けた超人です。昨年、彼の作品群が名画座で公開されていたのだが、金をケチって幾つか見そびれてしまいました。この度、社会人になったので、社会人マネーの力でオリヴェイラDVD-BOXを購入しました。約3万円…プレミア価格って恐ろしいですねw
早速、1本目「ノン、あるいは支配の空しい栄光」を観てみました。本作はカンヌ国際映画祭で審査員特別賞、国際批評家連盟賞を受賞し、その年のカイエ・ドゥ・シネマ ベストテンでも5位に輝いた作品。果たして…
1990年度カイエ・ドゥ・シネマ ベストテン
1.ピストルと少年(J.ドワイヨン)
1.動くな、死ね、甦れ!(V.カネフスキー)
3.ヌーヴェルヴァーグ(J-L.ゴダール)
3.グッドフェローズ(M.スコセッシ)
5.Alexanndria Encore Et Tojours(Y.シャヒン)
5.ノン、あるいは支配の空しい栄光(M.D.オリヴェイラ)
5.Hidden Star (R.ガタク)
8.夢(黒澤明)
8.デザンシャンテ(B.ジャコ)
8.ウ ディ・アレンの 重罪と軽罪(W.アレン)
「ノン、あるいは支配の空しい栄光」あらすじ
1974年、アフリカのとあるポルトガル領。長引く独立戦争に疲弊した兵士達は、トラックの上でポルトガルの歴史が語られていく…オリヴェイラが描く人類と戦争の関係
現在ブンブンは、ジャレド・ダイアモンドの「昨日までの世界」を読んでいる。パプアニューギニアの部族紛争と、現代の国家間の戦争を比較することで、人類史における「争い」の特徴を解き明かしていく内容の本です。オリヴェイラの「ノン、あるいは支配の空しい栄光」を観ると、まさにジャレット・ダイヤモンドの本を読んでいるような壮大なロマンを感じました。
まず、冒頭エキゾチックナ音楽に合わせ、長回しにセネガルの森を映し出す。そして、5分以上台詞なく、自然、トラックに揺られる疲弊した兵士が映し出される。オリヴェイラの画で魅せる心情描写がシャープに決まっている。
そして、そこからまるでギリシャ神話、千夜一夜物語のように、兵士同士のディスカッションから大昔の敗北の物語が語られていく。
4つの敗北の話はどれも、絵画のようなタッチで描かれる。Don’t think, feelと画面が訴えかけてくるようだ。なので、ポルトガル史に疎い私にとっても非常に惹き込まれる。中でも、2つの軍がにらみ合っており、片方が宣戦布告の演説をしているのに、演説を聴かずにもう一つの軍が砲撃をするシーンがブンブンの心に突き刺さった。
まるで、元寇が日本に侵略した際、日本側が演説をしているのに、無視して元寇が攻撃したあの事件を彷彿とさせられる。
4つの敗北の話が重厚に重なり観客はハッとさせられる。剣だろうが、大砲だろうが、銃だろうが、戦争は戦争だ。2000年経っても変わらない。そういうことをオリヴェイラ監督は気づかせてくれた。現代的な話なのに、ギリシャ神話のように神秘的で古風な作りにブンブン大満足な一本でした。
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