【ネタバレ解説】「三度目の殺人」尾頭ヒロミは検察官に転職していた!

三度目の殺人(2017)
The Third Murder(2017)

監督:是枝裕和
出演:役所広司、福山雅治、広瀬すず、
市川実日子etc

評価:40点

この週末は凄まじかった。なんたって、クリストファー・ノーランと黒沢清、そして是枝裕和の新作が一つの映画館で観られるのだ!ってことで、ブンブン、土曜日に「ダンケルクIMAX」「散歩する侵略者」「三度目の殺人」の3本立てをしてきました。今回紹介する、「三度目の殺人」は是枝裕和監督作の中でも雰囲気ががらりと変わっている作品。ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、現地ではスタンディングオーベーションとなった評判高い作品だが果たして…

尚、今回はネタバレ全開で語っていきます。

「三度目の殺人」あらすじ

勝ちに拘る弁護士・重盛は前科歴のある男の弁護をすることとなる。男は、解雇された工場の社長を殺した罪に問われており、自白もしている。貧乏くじを引いたとやる気のない重盛。裁判官・弁護士・検察も分かりきった裁判に対しやる気を魅せないが、重盛は男と面会するうちに段々事件に疑いを持つ…

是枝裕和が描くガチな法廷劇

本作は、是枝裕和監督が趣向を変えて描いた重いドラマだ。是枝裕和監督と言えば、ネグレクトを扱った「誰も知らない」や子ども取り違え問題を扱った「そして父になる」と一見シリアスな内容を、大衆向けライトに描くことで有名だ。しかしながら、今回はまるで「それでもボクはやってない」「終の信託」の周防正行監督作張りの重いドラマだ。

冒頭、役所広司扮する男の殺人シーンから始まる。犯罪ものの傑作「復讐するは我にあり」ソックリな演出で描き、そしてそのまま本編は野村芳太郎サスペンスを思わせるレトロな演出で重厚感を滲ませる。これは是枝裕和監督ガチだ!

尾頭ヒロミは検察官に転職していた!

そんな中、ブンブンの目を疑ったのは、市川実日子が福山雅治扮する弁護士側と対峙する検察官の役で出演していたことだ。それだけなら、なんら驚かないのだが、彼女の髪型といい、立ち振る舞いといい、「シン・ゴジラ

」の環境省自然環境局野生生物課長補佐・尾頭ヒロミそのものだったのだ!

いくら「シン・ゴジラ」の戦いが終わったと言え、環境省から検察官に転職するなんてびっくりだよ!

体感時間5時間!是枝裕和監督、キツイぜ!

こう聞くと、面白そうな作品に見えるかもしれない。しかしながら、実際は睡魔との戦いで、体感時間5時間に思えるほどながーーーーーーーーーーく、退屈でした。

一番の原因は、本作をミステリーとして観に行ったところがいけなかったところだろう。予告編やテレビの宣伝を観ると、殺人事件の真相を探るミステリーのように思える。しかしながら、この「三度目の殺人」ではこの謎解きをマクガフィンとして使っているのだ。結局、最後まではっきりとした真相は明らかにされない。福山雅治扮する、勝ちに拘り事件内容と真摯に向き合わない弁護士が、殺人事件の調査を通じて、腐敗した裁判システムと自分の傲慢さに気づき、改心しようとするキーとして「謎解き」が使われているのだ。だから、本作は明確な正解を出すのが本質ではない。謎解きを通じて明らかにされる、「社会」という外側、そして外側から観た自分を認知させることが目的となっているのだ。

こう文章で書くと面白いのだが、これが映画として観ると、非常に焦れったい。弁護士が改心するまでがとにかく長く、また被告が出すヒントも少ない。いたずらに、人物という人物をガチャガチャ動かしているだけにしか見えないのだ。「復讐するは我にあり」や野村芳太郎サスペンスの足下にも及ばない映画であることは明白だ。

撮影は模範的

ただ、そんな本作良かったところもある。それは撮影技法だ。映画撮影のお手本になる撮影が沢山観られるので、映画学校に通っている人には目から鱗ものの教科書だろう。

例えば、面会室のシーン。弁護士と被告が対話をしている。被告は弁護士に「手をかざしてごらん」と言う。被告は弁護士の事を知りたがっているのだ。しかし、弁護士は嫌々躊躇しながら手をガラス板に置く。これが物語終盤、弁護士の方から手を置いていく。このカットを入れることで、弁護士が「仕事」の関係を超えて被告、そして真実を掴もうとしていることを暗示させているのだ。

他にも、ハイアングルショットを入れることで、裁判は自分の思い通りだと思っていた弁護士が実は、社会システムに雁字搦めになっていたことを明らかにさせたりと、模範的なカメラワークが随所に見られる。

なので、決して悪い作品ではない。しっかりと、事件の本質を無視して内輪で結論を決めてしまう裁判システムの闇を暴いた作品であることは間違いない。しかし、ブンブンにとって今年最凶レベルに退屈な作品だった(泣

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