「メッセージ」は難解な作品だ
先日、第29回東京国際映画祭で
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作
「メッセージ
」を観てきました。
実は、原作者のテッド・チャンが
コンピュータ・サイエンスを学んだ
の理系人だけあって、一度観たり原作を
読んだだけでは非常に分かりにくい部分が
多い作品となっている。
そんなこともあろうかと、
映画評論家が「メッセージ」の
解説をしてくれました。
ただし、やはり本作を1度しか触れていない
人にとって頭がこんがらがるのも
無理はなくQ&Aで「わけワカメな質問」が
飛び出るほど混沌としていたので、
今回町山さんの解説を中心に
「メッセージ」解説を書いてみました。
がっつり、ネタバレ且つ
本作は全く調べないで観た方が
5億倍楽しめるので、
未見の方は5月までゼッタイに
このブログを読み進めないでください。
警告です。
「メッセージ」を観ていない方で、
このブログにたどり着いた方は
速やかに退出をお願いします!
それでは解説いってみましょう!
もくじ
そもそも、「メッセージ」どんな話
回想シーンが多いのでまず、
ストーリー全貌を明らかにします。
突如世界12カ所に高さ400m以上もある
「ばかうけ」型の宇宙船が降り立つ。
ある孤独な言語学者ルイーズは
軍に呼ばれ、宇宙人の言葉の
解読作業をするよう頼まれる。
数学者の男イアンと
共に、数時間毎にゲートが開く
宇宙船に入りコミュニケーションを
図ろうとする。
言語学者ならではのセンスを
活かして、宇宙人の言葉を
理解していく二人だったが、
中国やロシアなどが
次第に宇宙人に不信感を
示し、攻撃態勢に入っていく。
緊迫感が高まる中、
言語学者ルイーズは
なんとか宇宙人の言語を習得する。
その言語は、時制がないもので
習得することで未来も過去も
見渡せるものだった。
手にした未来予知能力で
中国の軍人を説得し、
宇宙戦争を回避する。
しかし、未来が見えたことで明らかに
なったのは、自分が数学者イアンと
結婚し娘を産むが、
若くして娘は亡くなってしまう運命だった。
それでも彼女はイアンと結婚する道を選び
子どもをつくることにし映画は終わる。
宇宙人の言語について
本作では「習得した言語によって思考が
変わる」という説に非常に影響を
受けている作品である。
そして、「メッセージ」で宇宙人が
使う言語は「中国語」や「日本語」「韓国語」を
非常に意識している
と町山さんは語っていた。
中国語の漢字は表意文字といって、
例えば「国」という漢字を見るだけで
読み方は違えど、日本人ですら
何を示しているのかが理解できる
ような文字を示す。
英語やフランス語などアルファベットの
並びで意思を伝える言語には決して
できない、文字で国籍を超えることができる
のが表意文字なのだ。
まさに宇宙人が使う言語はこれであり、
発声と文字が一致しないのだ。
また、宇宙人が書く文字は墨で書いたような
もので、時制が存在しない。
また、結論を最後まで明かさない
「韓国語」や「日本語」みたいな言葉なのだ。
なので、本作においてアメリカ人である
ルイーズがこの宇宙人語を習得することで、
時制の概念から解き放たれて、
未来を見通せる力がついたという
話になっているのだ。
子どもの回想シーンの謎
本作を観た人の中で多くの人が
混乱するであろうシーンは
「子どもとの回想」であろう。
冒頭にも挿入されていることから、
てっきり「過去に子どもを失って
哀しみに暮れている人」に言語学者が
見えるが、それは違います。
すべて、数学者と結婚してからの日々が
回想されるのです。
数学者は理系の人だけあって、
完全には宇宙人語を理解できなかった。
故に未来は分からないのだが、
言語学者は習得スピードが速いので、
宇宙人語をマスターする過程で未来の
自分が見え隠れするのである。
そして、
未来が分かるが故に、
娘が若くして死ぬことを
娘の死について語ったせいで
数学者と将来離婚することも、
回想できるようになるのだ。
中国人の説得
中国軍人が宇宙船に攻撃を仕掛けようとした緊迫感の中
ルイーズは本来知らないはずの
軍人の電話番号に電話をする。
何故出来たのかと言うと、
未来の世界で中国軍人が
ルイーズに電話番号と
自分が最も感動する話を
ルイーズに教えたからである。
若干「涼宮ハルヒの消失」っぽい展開である。
なぜルイーズは結婚の道を歩んだのか
物語ラストに、ルイーズは将来
娘を失うことがわかっているにも
関わらず、数学者イアンと結婚し
子どもを作ることを決める。
町山さんの解説を聞くまでよく
分からなかったのですが、これを
聞いたら一気に謎が解けました。
というのも、結婚しない道を
選ぶことで娘と育まれる
楽しい想い出までもが消えてしまう。
それが嫌だったから結婚したという説だ。
確かに、大変な人生だけれども
そこで作られる幸せな想い出は
金では計りきれないほど大切ですよね。
「スローターハウス5」の逆
テッド・チャンが原作である「あなたの人生の物語」を発表した当時、
「スローターハウス5」との類似を指摘された。
テッド・チャンはその小説ないし映画を
知らなかったが、後に小説版を読んでみて
意義を唱えた。
「スローターハウス5」は
酷い戦場を体験した男が
小説を書こうとすると、
タイムスリップするという
内容で、時制がバラバラな難解小説である。
この作品は「運命」に対して「変えられないモノ」
と悲観的に捉えているが、
「あなたの人生の物語」は
非常にポジティブなのだ。
哀しい未来は待っているが、
そこで得られる経験は大切なモノ
として明るく描いている点違うとのこと。
着想は変分定理
[blogcard url=”http://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/lecture/emw/emw4/emw4.htm”] テッド・チャンは物理用語の「変分定理」の話から
本作を書こうと決めたそうだ。
「変分定理」とは文系人にとっては
メチャクチャ難しいのだが、
町山さんの言葉をたどって説明してみる。
皆さん、水の中にコインを
浮かべたことがありますか?
恐らく、水面に映ったコインは
想像以上に水面に近いところに
あるように見える。
その原理を体系化したのが「変分定理」だ。
光が水の中を通る時、
光のスピードが遅くなって、
地面に光が到達する位置がずれる。
しかし、本来水を通らないと
その着地地点はわからない
にも関わらず光は常に
地面に到達する最短地点を
選び出し水の中に突っ込むのだ。
物理学者の中では、
「水の中に入らなければ
自分の到達点が分からないのに、
何故だ?光は未来予知ができるのでは?」
と物議を醸している。
その理論にテッド・チャンは惹かれたとのこと。
思い出すを映像化
「メッセージ」は
「アニー・ホール」や
「(500)日のサマー」のように
時系列をバラバラにして描いている。
人が過去を思い出すとき、
それには時制がないということを
効果的に使っているのだ。
なので、「メッセージ」は
ただのSFパニックもののように見えて
人間のモノの考え方に
迫った非常に深い哲学的な
作品だったのである。
恐らく、これからもっと様々な
解説が出ると思うので、
本作を気に入った方は
他のブログ等を
チェックしてみてください。
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