ダゲレオタイプの女(2016)
La femme de la plaque argentique(2016)
監督:黒沢清
出演:タハール・ラヒム、
コンスタンス・ルソー、
オリヴィエ・グルメ、
マチュー・アマルリックetc
評価:90点
「岸辺の旅
」、「クリーピー
」と
国内外で賛否両論の渦に巻き込む
鬼才・黒沢清。
彼が初めて、フランスで、
しかもキャストを総て
外国人で固めたチャレンジングな
映画「ダゲレオタイプの女」。
トロント国際映画祭でも評判な
本作を、日本では10/15(土)
公開のところ一足早く観てきました!
「ある過去の行方」にも
出演されていたタハール・ラヒム
が登壇されました。
↑タハール・ラヒム
舞台挨拶で、黒沢清は
「僕はフランス語も英語もほとんど
話せませんが、翻訳家はもちろん、
役者や美術さんが、一言も聞き漏らさない
ようじっくり聞いてくれたので、
日本で映画を撮るよりもやりやすかったです。」
と語り、主演のラヒムさんは、
「黒沢清監督のこの作品に出られて
誇りに思っています」と語っていました。
それでは、ブンブンの感想&ちょびっと
解説始まるよ!
「ダゲレオタイプの女」あらすじ
フリーターのジャンが、ある屋敷にやってくる。写真家ステファンの助手として働くことになる彼。
彼はダゲレオ写真という、昔の手法を使って、
「美」を追求していたのだが、
あまりにストイックすぎてドゥニーズという
女を自殺に追い込んでしまう。
危機感を抱いたジャンは、
屋敷に出入りするマリーという
女を逃がそうとするが…
「クリーピー」と同構造!
そして愛と哀の物語
本作を観て驚いたことがある。
それは、プロットが「クリーピー」
と同じだということ。
「クリーピー」は、ある家を中心に
囚われる者と捕らえる者のコントラストを
描く。そして、本筋とは別ベクトルから
来るサブストーリーにもかなりの
重点を置いた作品だ。
「ダゲレオタイプの女」も同様、
写真家の家を中心に
女に心囚われた写真家と、
彼から女やあるものを捕らえよう
とする助手とのコントラストが
描かれる。
そして、これはネタバレになるので
言えないのだが、後半から始まる
全く別の物語がアクセントになる
内容である。
ただし、「クリーピー」が狂と凶を
描いているのに対し、
「ダゲレオタイプの女」は愛と哀を
描いている。つまり、とても
切ないのだ。
あなたには、生涯忘れられない
異性の方はいますか?
彼女のせいで前に進めなくなった
ことはありますか?
ブンブンはあります。
愛する人がどこか遠くへ
行ってしまった哀しみ、
その切なさに涙する。
でも、メチャクチャ怖い
予告編とここまで読んだ方の中には、
「愛を舞台劇タッチに描いた作品なのか」
と思うかもしれない。
しかし、本作はあくまで黒沢清映画だ。
確かに家の描写は演劇的だが、
彼お得意の明暗を使った映画的手法に
より、とんでもなく怖い作品へとも
変貌を遂げている。
「クリーピー」のように、
ミスター顔芸たるものが
「ワァ」とおそってくるわけでは無い。
非常に静かな映画だ。
しかし、得体の知れない何かがいる
感触の魅せ方。
自殺した女の亡霊の使い方が
本当に上手く、ただ立っている
だけなのにメチャクチャ怖いのだ!
ヒッチコックへの愛
監督は映画祭のインタビューで
ヒッチコックのオマージュを
多用していることを明らかに
しているが、まさにその通り、
「サイコ」や「めまい」など、
随所にヒッッチコックの
手法が使われている。
特に、本作の「車」の
使い方には注目して頂きたい!
ヒッチコック時代のような、
変な感じが如実に表れているぞ。
さいごに
本作は黒沢清初海外進出作だが、
「クリーピー」の欠点を
すべて補い、
ホラーとしてもラヴストーリーと
しても一級のそして驚きがある
作品となっていた!
最近の黒沢清映画は苦手なのだが、
ようやく「CURE」や「ドッペルゲンガー」
のブンブンが大好きな黒沢清映画に
戻ってきたなと興奮した作品でした。
日本公開は10/15(土)
ヒューマントラストシネマ有楽町、
シネマカリテ他にて公開です!
コメントを残す