FOUJITA
監督:小栗康平
出演:オダギリジョー、中谷美紀、岸部一徳etc
評価:75点
「泥の河」「死の棘」の巨匠・小栗康平が10年ぶりに作った東京国際映画祭出品作。
「ミッドナイト・イン・パリ」で描かれた
アーティスト黄金時代にパリで活躍した
日本人画家レオナール藤田(藤田嗣治)
の半生を描いたのだが、どうもよくある
伝記ものとは雰囲気が違うぞ…
あなたは勝てますか?
本作で、小栗康平はオダギリジョー扮する
レオナール藤田に、「あなたは勝てますか?
流行技術を追いかけるだけでは勝てませんよ」
と語らせる。
まさに、今回小栗康平が本作に込めた
想いである。
よく、日本人が海外で撮ると外国かぶれ
な映像になるか、日本を強調した
作品になる…大島渚のように。
しかしながら、本作は徹底的にどちらにも
かぶれずにドライに構える。
絵画のような構図で制止したカメラの
前で人々は動く。
そこにはヌーヴェル・ヴァーグっぽさはない。
また、日本描写も淡々と距離を置いて描く。
時代時代の匂い、味わいが死んでいる
と非難されそうなまでに挑発的な
絵面だがこれが魅了される。
これこそ藤田同様、世界を相手に
闘おうとする小栗康平の独自性と言えよう。
恐らく、「美しき諍い女
」
の技術を参考にしているだろう。
しかしながら、派手に目立ちまくり
人々の心に焼き付けた藤田同様、
本作は唯一無二の世界で心を鷲掴みにした。
伝記ものとしてどうか?
本作は、アート性を求めるあまり
彼の人生が切り貼りされているだけのように見える。
藤田の離婚の理由、
何故帰国したのか、
カトリックに改宗した理由etc
レオナール藤田を語る上で
欠かせないエピソードが明らかに欠落している。
レオナール藤田に詳しい人でも、
サブエピソードが小さすぎて
満足いくものと言えないであろう。
伝記ものとは、ある人物の
メインストーリーを語るか、
秘密を暴くかの二択である。
しかしながら、どちらも
上手く描けてない本作は
伝記ものとしては明らかに
失敗だ。監督は藤田嗣治の
本質を描くが為に意図的に、
変な撮り方をしているそうだが、
これはちとやり過ぎだ。
「映画芸術」に嫌われるの
必至の内容だ。
とはいえ、
観て損はしない。
むしろ、オダギリジョーの
段々上手くなっていくフランス語
捌き。観たこともないような
カメラ捌き。しかもアート映画
にも関わらず藤田の滑稽な
部分を強調していることにより
生み出されるユーモア、笑い。
嫌いにはなれない。
むしろ大好きだ。
特にバーでレオナール藤田が
流暢なフランス語でギャグを言い、
カクテルを作るシーンは
宝石のように光り輝いている。
もはや、これは「伝記」ではない。
動く藤田の「肖像画」なんだなと感じた。
毎年冬になると、凄い邦画が
出現するがまさしく、
本作は一見の価値あるぞ~
是非、角川シネマ有楽町等の
スクリーンで体感して頂きたい。
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