2016年11月イメージフォーラム公開!ユーゴスラビアの闇を描く「灼熱」

灼熱(ZVIZDAN)

灼熱の太陽 映画

監督:ダリボル・マタニッチ
出演:ティハナ・ラゾヴィッチ、ゴーラン・マルコヴィッチ、
ニヴェス・イヴァンコヴィッチ

評価:80点

本年度カンヌ映画祭「ある視点」審査員賞
受賞したクロアチア映画「灼熱」。
1991年クロアチアがユーゴスラビア脱退を
宣言したことからセルビア人と喧嘩になり
クロアチア紛争が発生した。
その問題の年から10年ごと2011年までの
3つの愛の物語を同じ俳優に演じさせた
ことが話題となった。

ユーゴスラビアの厳しい歴史を世界に伝える
映画監督は「アンダーグラウンド」の
エミール・クリストリッツァ

「ノー・マンズ・ランド」のダニス・タノヴィッチ
がいるが、新しい語り手ダリボル・マタニッチ
はどんなテクニックで表現しているのだろうか?
今回は結構ネタバレしますので了承ください。

傷跡は人々の心の奥底に…

この作品は先述のの通り、
1991年、2001年、2011年の3つの時代に
またがっている。

一つ目はクロアチアとセルビアとクロアチアの
国境を舞台にロミオとジュリエット状態になる話である。
セルビア人の女の子はトランペット弾きの青年が好きで
クロアチアの演奏会に行くが、
凶暴な父親が引き戻しにやってくる。

国境での激闘の末青年は国境兵に殺されてしまう。

この話が2話目以降に影響を与える。
その殺された青年が、今度はセルビアで
少女とおばさんの暮らす家の修理にやってくる
話だ。残念ながら、ブンブンはどっちが
どの民族かは分からなかったが、
おばあちゃんが青年と娘を結婚させようと
企んでいるのを見ると、
青年は1991年の話の立場と逆転している。

青年も少女のことを気にしているが、
少女は過去の侵略により青年の民族に
対し憎しみを抱いている。

紛争から10年廃墟となった、土地に
はびこる「憎しみ」がよく描けている
証拠である。

そして3話目2011年。
すっかりクロアチアとセルビアの
国境は復興しているが、
それでも憎しみは言えてないことを
表しているパートである。

青年はかつての恋人と仲直りしようとするが、
できずに野外クラブに身を投じる。
この時の恋人が放つ
「セルビア人の家に住みやがって!」
という言葉に込められた憎しみに胸を打たれる。

チェコ映画「ひなぎく

」でラスト、
「踏みにじられたサラダだけをかわいそうと思わない者に
捧げる」
と語られるが、
まさにこの映画が言わんとしている、
見かけだけの復興にだけが復興ではなく
人々の心は被災したままだということに
直結していると言える。

説明は少なく、日本人にはわかり辛い
ヨーロッパ向けの作品だが、
ユーゴスラビアの歴史に興味ある方
必見の作品である。

※日本公開は2016年11月
渋谷イメージフォーラムにて!

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