マルホランド・ドライブ(MULHOLLAND DR.)
監督:デヴィッド・リンチ
出演:ナオミ・ワッツ、ローラ・ハリング
評価:90点
最近、ツインピークス新作を作るとか
作らないとかで話題のデヴィッドリンチ。
2000年代後半の作品こそキレは少ないモノの、
彼のフィルモグラフィーは独特の色を放っていた。
おっさんが文字通り消しゴムになる「イレイザーヘッド」、
耳が落ちていたことから始まる「ブルーベルベット」など
変な作品が目白押し。
しかし、意外とじっくり見るとよくある話、
旧作からの引用で構成されていることが多く、
それに気づいたとき、やはり「リンチってすげーな」と感じる。
今回紹介する、リンチ映画史上最難とも言われる
「マルホランド・ドライブ」を紹介するぞ!
実はオマージュ映画
初見殺しの難解さ、授業で観たときも周りの友だちが「よくわからなかった」と
口を揃えて言っていたが、
実は「パルプ・フィクション」さながら
オマージュをさりげなく入れ込み
再構築させた作品だ。
ただし、デヴィッド・リンチのことだから
合成させる映画がクレイジーだ。
結論から言おう、これは「サンセット大通り」と
イングマール・ベルイマンの「仮面/ペルソナ」
をごちゃ混ぜにした作品だ。
「サンセット大通り」は男が死んでいるところから始まり、
過去の栄光に取り憑かれて狂気に陥る女優の人生を
えぐり出す話。(丁寧にも物語の前半に
引用するよという合図を出していることから明らかだ。)
「仮面/ペルソナ」は精神を病み失語症になった
女優を看病する看護婦が主人公と思いきや、
実は看護師は女優が生み出した幻影では
と思わせて終わる作品。
これを融合させて、名女優になれないレズ要素の
強い女優が、大好きな女優からも見捨てられ
復讐するのだが、罪の意識が消えず自殺直前に観る
走馬燈をエドワード・ホッパー調で描き出している。
↑エドワード・ホッパー調
実は丁寧な作り
「ロスト・ハイウェイ」同様、実は夢オチで
がっかりするかもしれないが、
それを差し置いて物語の上手さは注目して貰いたい。
一度目は気づかないかもしれないが、
二度目観ると非常に巧妙にヒントを教えてくれる。
まず、夢のパートにおける二人の名前が
リタとベティになっている。
リタは魔性の女映画の代表格「ギルダ」のヒロインを
演じた女優の名前、ベティは仲間を踏み台にし
のし上がってく女優を描いた「イヴの総て」のヒロインを
演じた女優の名前である。
売れない女優ダイアン(皮肉にも当時ニコール・キッドマンばかり
に役を奪われていたナオミ・ワッツが好演)が
妄想の中で、のし上がって大女優になりたい気持ちをベティ
に託し、しかし現実ではカミーラに役を奪われ
自分に対し愛すら与えてくれない彼女を陥れたい
想いをリタに託していると考察できる。
また、夢のパートで出てくるほとんどの
人や名前は現実パートで出てきているものが
多く。夢は無意識の塊感を力強く強調させている。
そして、この作品の前半部分が夢であることは、
一見無意味そうに見えるダイナーの会話シーン
でキチンとヒントとして出していたりする。
現実パートに移る直前では「仮面/ペルソナ」
でも使われたブレを強調させる手法でアピールしている。
このようにヒントが多いため、二度観ると謎が解ける。
いやーただただ不条理な映画じゃないんだなー
と感心しました(*^_^*)
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