天空の蜂
監督:堤幸彦
出演:江口洋介、本木雅弘、綾野剛etc
評価:100点
映像化不可能の映画化…
映画好きには聞き飽きた言葉だ。
そして、何度もだまされてきた文言である。
確かに映像化はできたが、
無理が生じクソ作になったのを何度も
映画好きは目撃してきた。
しかし、「天空の蜂」は文字通り
映像化不可能な世界観を見事に
創り上げ、そして非常に映画の特性を活かした
重厚なサスペンスへと昇華させた。
油断して観ると、口をあんぐりと開けてしまう
ハイクオリティな作品なのである。
何故、「天空の蜂」は映像化不可能だったのか?
この作品。映像と内容の二重の制約で映像化が絶望的だった。まず、巨大ヘリをずっとCGで表現する必要が
あるので、アメリカに劣りまくってくる日本のCG技術では
リアルに表現するのが難しい点。
そして、もう一つが深刻で「原発」を扱っている点だ。
東野圭吾原作の「天空の蜂」が刊行された1995年から20年。
東日本大震災を経験し、日々脱原発デモが行われている
ご時世。ド直球に原発テロを扱った内容を映画化するのは
非常に危険だ。しかも、原発や震災を絡めると、
大抵の映画がプロパガンダ色が強くなり、
右か左に偏ってストーリーを作り込んでしまう。
そして感動シーンが臭い物になってしまう。
それを易々とクリアしたから驚きである。
堤幸彦、渾身の映画化
まず、この作品はストーリー重視で
攻めることでかつて日本が得意とした
サスペンス映画を復活させている点にある。
CGこそしょぼいのだが、
それを割り切って
畳みかけるような群像劇スタイルにしたのがデカかった。
残り時間を魅せたり、意外な伏線回収を
徹底的に行うことで観客に
緊張感と楽しさを与える。
会議室での技術者同士の格闘。
まさに、「新幹線大爆破」の
世界観が再現されているのだ。
ここ最近の作品で忘れられていた、
刹那の緊張、そして犯人まで
同情を誘うようなバックグラウンドを
丹念に描きあげることで
濃密にドラマが練り上がっていった。
また、この作品が脱原発派にも原発推進派
にもつかず、原発で働く人の苦悩、
どちらのポジションの苦悩も描いているから
ラストに感動の一コマを入れても、
全く臭みがない。プロパガンダ色を消して、
シリアスな話にも関わらず娯楽として
観られる仕様になっているのは本当に凄いところだ。
まさにスイカに塩を振って甘さを強調する技を
見つけることによって「天空の蜂」の
面白さを最大限引き上げていると言えよう。
ってことで、今年の邦画ベストは
恐らくこれだろう!
「新幹線大爆破」や「太陽を盗んだ男」の
かつて邦画が面白かった時代の
技術が総動員されて作られた
このパニックサスペンス、
是非劇場でご覧あれ!
主題歌「Q&A(秦 基博)」
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