ツレがうつになりまして。
監督:佐々部清
出演:宮崎あおい、堺雅人、吹越満etc
40点
↑今回から点数表示されますよー
「鬱病」
グローバル化で高速且つ質の高い仕事が
求められている現代、
誰しもが陥ってしまう病、
いわば現代病である。
今回、漫画家の細川貂々の
夫である望月昭の
闘病生活を描いている。
そして、ライトな映画作りにも関わらず、
実は鬱病の下調べを入念に行っていることがわかる作品であった。
まず、鬱病になる過程。身体の不調、
鬱病と診断される直前の不自然な動きは
鬱病寸前を体験している私からみても「本物」であった。
職場にぐずぐずしていこうとしない、
溜息の描写が特にリアルであった。
まあ、幸運なわけで…
ただし、この話は非常にシリアスな内容を
ポップに描いているが
故に生じる弊害があり、
観終わった後振り返ると、
このケースはいかに幸運であったかが伺える。
まず通常、夫が鬱状態でも
退職できない理由として収入が挙げられる。
夫退職した場合、
失業保険を使っても家族を養うことは困難である。
また、宮崎あおい演じる奥さんは漫画家、
しかも連載打ち切り寸前の漫画家という
非常に収入が安定しない状況である。
奥さんが、
「私がなんとかするから退職しろ、
さもなければ離婚する」と言って、
満を持した夫は退職するわけだが、
奥さんが新しい仕事を得られなければ、
どっちにしても離婚していた可能性が高い。
故に、どうしても夢物語のイメージが強くなってしまう。
吹越満の無駄キャラ感
↑ブンブンイラスト書いてみたのだが、
残念な感じに…
そして、これに拍車をかけたのが
吹越満扮する杉浦という
患者のポジションだ。
病院で、ツレに絡む同じく
鬱病患者の設定だが、
明らかに不審者である。
突然、怪しい動きで近づきツレに
語りかける気味の悪さが際立ちます。
さらに、彼は登場するたびにツレに
絡み去って行くだけの、
物語に影響を全く及ぼさない人物として
機能しており、無駄な人物配置が伺える。
ゼミメンバー内で、鬱病の多様性を
示す描写ではと分析がなされたが、
その場合ツレが「鬱病座談会」のような
場所に行き、他の鬱病患者からの意見を
聞くという描き方の方が自然だと言える。
同じくライトな病気映画
「きっと、星のせいじゃない。」では、
ひねくれた難病患者が主人公と
トリッキーな内容になっているが、
きちんと座談会で病気の多様性を表現していた。
闘病ものにおける「座談会」シーンの使いやすさ
「座談会」シーンの使いやすいところは、
物語に不必要なキャラクター、
しかし描きたいときに有効なところにある。
「座談会」だけの出演にしても、
観客は「座談会だけの関係」と受け流すことが容易だ。
恐らく、「ツレがうつになりまして。」
ではキャスティングの段階で吹越満という
凄腕俳優を選んだところに問題がありそうだ。
また、原作を忠実に映画化する際に
必要だった人物だったのかもしれない。
ただ、この場合、「杉浦」という人物の
描写を細かく演出する必要があった。
確かに、宮崎あおいも堺雅人も
吹越満も演技は上手いが上記のように、
ストーリーで観ると非常に厳しい
評価をせざる得ない作品と言える。
しかしながら、「鬱病」という現代の病の実態を
世に広めた点は素晴らしいと言える。
「ツレがうつになりまして。」予告編
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