皆さん、アメリカのアニメ会社って聞いて何を浮かべます?
「モンスターズ・インク」「トイ・ストーリー」で有名なピクサー、
「シュレック」を生み出したドリームワークス。
そして知らない人はいないであろうディズニー。
でも、近年新たな勢力としてライカ社が君臨しようとしている
ことをご存じだろうか。
この会社はまだ2作しかアニメーションを作ったことがないが、
どれもアカデミー賞長編アニメ部門にノミネートされた実力派である。
まず、デビュー作の「コララインとボタンの魔女」。
ティム・バートンもびっくりブラックユーモア、
子どもが見たらトラウマになるで
あろう描写で衝撃を与えた。
2本目は「パラノーマン ブライス・ホローの謎」。
映画オタクの心を刺激するホラー映画、サスペンス映画の
オマージュの連続。ストップモーションアニメなのに、
B級映画感を醸し出す巧みなカメラワークで圧倒した。
そして今回、恐らくアカデミー賞長編アニメ部門にノミネート。
「ヒックとドラゴン2」と一騎打ちになるであろう作品を
チェ・ブンブンは観てきた。
「The Boxtrolls」
監督:グラハム・アナベル、アンソニー・スタッチetc
声の出演:ベン・キングスレー、ジャレッド・ハリスetc
ダンボールを洋服代わりにする怪物ボックス・トロールがいる世界。
何故か、怪物に育てられた少年「エッグ」は
トロール狩り行われる地上世界に行ったせいで
人間として生きるか、トロールとして生きるか悩まされる。
次第に狩られていき、減少するトロールの仲間たち。
彼は、謎のお嬢様と共にトロールハンターへ復讐しに
向かう…
一見すると、ミニオンがティム・バートン色になったお気楽アニメに
見えるが、年相応の人が見るとどうも「赤狩り」の話にしか
見えない恐ろしい作品である。
まず、敵役のファッションに違和感を覚えるところから始まる。
通常この手の作品の悪役は黒に統一されたファッションだったり
奇抜だったりする。しかし、それ以上にヒーロー、味方を奇抜に
作り込むのだが、悪役がどの役よりもど派手なのだ!
顔や体はボロボロぐちゃぐちゃなんだけれど、真っ赤な服装に
身をくるむ。そして、彼らがトロールを狩る目的が、
白い帽子がトレードマークの大富豪の帽子と、自分の帽子を
取り替えるというしょうもない理由なのだ。
んっ世界征服、金・女・ドラッグじゃない。おかしいぞ。
よく見ると、この敵役の目的は社交界に入ることだとわかる。
別に、白い帽子を被らずとも社交界には入れるのだが、
彼は白い帽子を被らないと社交界に入れないと勘違いし
奇行を繰り返す。
そして、街の人が怖がっているトロールを狩り続けることで
街の信頼を得ようとする。
これって共産党員と、一般市民、そして共産党員を売る人
の関係と解釈すると非常に納得のいく話になる。
敵は、自分の「赤」ってレッテルを消去したいがために
他の赤を売って売って売りまくる。でも、どんなに売っても、
社交界に露骨に顔を出すと冷ややかな目で見られる。
その葛藤が狂気へと導く…ってとんでもない話である。
そして表現もかなり暴力的、グロテスクなものが多く、
これは子どもに見せたら、トラウマになるか、
頭の中に無数の?が出る作品であろう。
でも徹底的に作り込まれたセット、カメラワークは
見事なもの。「小さな巨人」を思わせる、葛藤シーンには
見事としか言いようがない。
特に冒頭のトロール狩りから命がけで逃げてきたトロールが、
人間の子をあやすシーンは号泣ものである。
かなり珍しい冒頭から泣かせにくるアニメなのだ。
フランスの映画誌「STUDIO」の映画評論家評価によると、
観た人は10人中4人ではあるものの3人が最高点4つ☆をつけ、
残りの1人が3つ☆をつける好評価っぷり。
ドランの「MOMMY」並の高評価も頷ける作品である。
確かに3Dにする必要はあるのか?
多少ツッコミどころのある描写こそ
あったけれど、アメリカのアニメがここまで
大人向けクオリティの作品。しかも、
オリジナリティのある作品を生み出せたのは
凄いことだと思う。
これからもライカ社のアニメには注目である。
コメントを残す