『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』保身の為に市民を業火へ

ネタニヤフ調書 汚職と戦争(2024)
The Bibi Files

監督:アレクシス・ブルーム

評価:60点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフの汚職を暴いた”The Bibi Files”が邦題『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』で公開されると知ってシアター・イメージフォーラムへ行った。平日にもかかわらず、多くの観客が押し寄せており関心の高さがうかがえる。

『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』あらすじ

イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフの汚職疑惑の実態に迫ったドキュメンタリー。

2023年10月7日、イスラム原理主義組織ハマスによるイスラエル攻撃への報復として、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザへの攻撃を開始して以降、終わりが見えずに多くの人命が失われているガザ・イスラエル紛争。この紛争のキーマンとされるのが、カリスマ的リーダーシップを持ちながらも、強硬的な政治姿勢で物議を醸すイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフだ。彼は在任中に刑事起訴された史上初のイスラエル首相でもある。2017年、汚職疑惑の捜査が進む中、ネタニヤフ本人や関係者への警察尋問記録の一部が、極秘裏に本作の制作チームへリークされた。そこには、財界やメディアとの癒着、贈収賄、利益供与などの実態が記録されていた。

本作では、イスラエルの元首相エフード・オルメルト、国内諜報機関シンベト(イスラエル保安庁)の元長官、ネタニヤフの元広報担当、著名な調査報道ジャーナリストらが証言。汚職がいかに国家の腐敗を招き、ネタニヤフが有罪を免れるため極右勢力と結託して長期政権を維持し、民主主義を危機に追いやっていったのかを暴いていく。

ネタニヤフ自らが公開中止を求めて訴訟を起こそうとした作品であり、イスラエル国内では上映禁止となった。「『闇』へ」「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」で知られるアレックス・ギブニーが製作総指揮を務め、「アニタ 反逆の女神」のアレクシス・ブルームが監督を務めた。

映画.comより引用

保身の為に市民を業火へ

本作を観ると、今の蠱毒がごとく明らかにイカれている国のトップや大企業のCEOが殴り合いながら市民を蹂躙していく様の構造的問題がよくわかる。要は、汚職やイカれたことをして上り詰めた者は止まった瞬間に人生が終わる。牢屋にぶち込まれるなどといった最悪を回避するためには、平然と「自分は正しい」と言い続け、権力で殴り続けるしかないのである。

本ドキュメンタリーを観ると、ネタニヤフに味方は少ないように思える。周囲は敵だらけなのだが、持てる権力を全力で使い紙一重で回避している。その代償は一般人、そしてなによりもパレスチナへと向かっていく。こんな蠱毒の世界を生きているんだなと暗い気持ちになった。