炎(1978)
Flammes
監督:アドルフォ・アリエッタ
出演:キャロライン・ローブ、グザヴィエ・グランデス、ディオニス・マスコロ、マリル・マリーニ、パスカル・グレゴリーetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
日仏学院にて開催のフランス実験映画2025にてアドルフォ・アリエッタ『炎』を観た。前日、夜勤明けにマルセル・アヌーン四季シリーズを観たら、1本目の『夏』で惨敗し散々な結果となったわけだが、本作は興味深く観ることができた。
『炎』あらすじ
台風の吹き荒れるある夜、少女バーバラは、窓辺に消防士の男のシルエットを見つける。その晩から彼女は消防士のことが頭から離れなくなり、時が経っても消防士のことを夢想しつづける。やがて彼女は、消防士と出会うために、虚偽の火事の通報をしてしまう。デュラスが絶賛した映画作家アリエッタによる、現実と幻想の交錯した夢幻的な最高傑作。「今日もなお、叙情性、夢、詩、欲望を信じているすべての若い映画製作者たちにとって、インスピレーションの源であり続けている」──オリヴィエ・ペール
※ランス実験映画2025より引用
The Flame in frames
本作は、少女が夢で消防士の幻影を目撃し恐怖するところから始まる。しかし、その経験が強烈だったため、消防士に恋を抱き虚実双方で消防士とのエンカウントを渇望する物語となっている。夢とは深層心理に抱く欲望が非ユークリッド的に現出する事象である。映画の世界では、悪夢としてこのギミックが応用される。たとえば、『エルム街の悪夢』では人々の心の中にある恐怖が引き出される。それがループするように恐怖を連鎖させていき、人々の関心が恐怖に覆われることで現実に影響を及ぼす。心に病を抱える者が、トラウマを脳裏で再生し続けることで恐怖が増大し心を蝕む現象を、巨大化する悪夢として『エルム街の悪夢』は表現している。
一方で『炎』は、夢における反復の要素を抽象化することで悪夢に囚われない動きを捉えることに成功している。夢において現出するのは「関心」であると定義するのだ。何らかのきっかけで夢に消防士が出る。それをきっかけに消防士への関心が高まり、それが恋へと繋がる。夢の本質を「関心」と定義することで、対象Xに対する人間心理を恐怖から恋情へと遷移することができるのだ。この概念に惹き込まれた。













