PERFECT BLUE(1998)
監督:今敏
出演:岩男潤子、松本梨香、辻親八、大倉正章etc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
今敏の『PERFECT BLUE』がU-NEXTで配信されたので久しぶりに観た。本作はアイドルを巡る眼差し、理想と現実との狭間で壊れていく者を描いた作品だが、後の『パプリカ』に通じるものや日本アニメが得意とする内なる他者との対峙を描いた作品として重要なものを感じた。
『PERFECT BLUE』あらすじ
「パプリカ」「千年女優」などで国内外で高い評価を受けたアニメーション監督・今敏が1998年に手がけたデビュー作。竹内義和の小説「パーフェクト・ブルー 完全変態」を原作に、アイドルから女優に転身した女性を襲う悪夢のような出来事を描く。アイドルグループを脱退し、女優へと転身を図った霧越未麻。連続ドラマのレイプシーンやヘアヌード写真集など、これまでのイメージを覆す過激な仕事の連続に戸惑いながらも、着実に知名度を上げていく。そんな中、彼女の関係者を狙った連続殺人事件が発生。ネット上では未麻の名をかたって詳細な日記をつづる人物が現れ、彼女は次第にストーカーの影に怯えるようになっていく。漫画家・江口寿史がキャラクター原案を担当。
限りなく現実に近い虚像
暴言吐かれる中、アイドルを引退した霧越未麻。女優を目指すと言ったものの、彼女に来る依頼はレイプものの作品やヌード写真集といったいかがわしい仕事であった。離れていくファン、荒れる掲示板、ストーカーのような守護者にトラウマ的な撮影。その中で彼女は虚像と対峙していく。同時に現実でも実害があるため、虚実曖昧な世界で精神に異常をきたしていく。
人は、現実とあるべき姿の差を埋めようと努力していく。しかし、その差を埋める過程でノイズが入ることにより心乱されていく。霧越未麻にはアイドル時代思い出があり、女優になるために過激な演技に没頭することで抑圧された自己を癒すようにアイドルとしての自己が忍び込む。
本作が興味深いのはこの葛藤は霧越未麻のものだけでない点である。ファンを中心に、この転換に対して離れていく者、固執する者を捉え、マネージャーサイドからもこの問題を取り上げることで、個人では背負いきれない重圧を表現し、それが虚実の曖昧さへとつながってくるのだ。
作劇の型として主要登場人物を3人に設定する技法があるが、タレントの内面/ファン/マネージャーと群として取り扱い、その中で細分化させていくことで物語に深みを与えられた好例であろう。