『誓いの休暇』チェンソーマンで引用されたので

誓いの休暇(1959)
BALLADA O SOLDATE

監督:グリゴーリ・チュフライ
出演:ウラジミール・イワショフ、ジャンナ・プロホレンコ、アントニーナ・マクシーモアetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、『チェンソーマン レゼ篇』を観たのだが、デンジがマキマと映画を10本ハシゴする挿話の中で最後に観た映画が『誓いの休暇』であった。構図とストーリーテーマ的に『誓いの休暇』で間違いないだろうと思って、映画が終わった後、軽く調べたらどうやら正解らしい。有名なソ連映画ではあるのだが、意識しないとエンカウントすることが難しい作品であり、キネマ旬報ベストテンガチ勢とか、大学の授業で観た、シネマヴェーラでたまたま観たといった形だろうと思うのだが、藤本タツキはどこでこの映画を知ったのかが気になる。とはいえ、今の時代モスフィルムのYouTubeチャンネルを開けば、英語字幕ではあるものの無料かつ高画質で観られるので観直してみた。

『誓いの休暇』あらすじ

「女狙撃兵マリュートカ」のグリゴーリ・チュフライ監督が、1人の善良な青年兵士の帰郷を軸に反戦をうたった名作ソ連映画。若い兵士アリョーシャは戦場で思わぬ武勲を立て、特別に6日間の休暇を与えられる。往復だけで4日かかる故郷の母のもとへ向かうアリョーシャだったが、お人よしの彼は道中で人助けのために貴重な時間を費やしてしまう。ようやく貨物列車に乗り込んだアリョーシャは、そこでシューラという少女に出会う。2人は惹かれ合い、束の間の幸せな時間を過ごすが……。

映画.comより引用

チェンソーマンで引用されたので

凄惨な戦場から離れ、束の間の休暇を与えられたアリョーシャは思うように故郷へ辿り着けず、折角の休暇を消費している。そんな最中、少女シューラと出会い刹那の親密な関係を結ぶ。

「チェンソーマン」では、簡単に人が死に逃げたくても逃げられない世界に諦観する人々を軸に物語が紡がれている。現代日本のどうしようもない世界だが、生きるためには目の前の危険な仕事の奴隷にならないといけない状況の切なさが染み出している。

マキマは一旦置いておいて、デンジがこの作品に「よくわからないけれど、なにか心揺さぶられるもの」のは、一期一会の出会い、折角の親密さも戦争によって簡単に奪われてしまう。もう一度などないのかもしれない。それでも目の前の状況を受け入れ、微かな希望を託し続けるしかない状況が心の琴線に触れたのであろう。マキマとの映画館デートの後にエンカウントするリゼとの恋と破滅への導入を匂わせるものとして『誓いの休暇』を引用した点は面白いと感じた。実際に、この映画のクライマックスの抱擁は残酷なナレーションもあり、心揺さぶられるものがある。