『乱れ雲』うわっ、前から加山が!!

乱れ雲(1967)

監督:成瀬巳喜男
出演:加山雄三、司葉子、草笛光子、森光子、浜美枝、加東大介、土屋嘉男etc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

成瀬巳喜男は、どうも勉強の色が強くて「楽しい」から離れたところにいる監督のように思える。ただ、もうそろそろ成瀬巳喜男の基本は押さえて置く必要があるなと思い、有識者からオススメを訊いた。どうやら『乱れ雲』が面白いらしくU-NEXTで観たのだが、想像の100倍面白かった。

『乱れ雲』あらすじ

江田宏と由美子は幸福の絶頂にいた。江田は通産省に勤めていて米国派遣の辞令を受け、妻の由美子は妊娠していることを知ったばかりだった。だが、江田が交通事故で死んだのは二人が祝杯をあげてから間もなくのことだった。告別式の日、江田を轢いた三島史郎が現われた。由美子は史郎に激しい憎悪を感じた。史郎の起した交通事故は不可抗力で、彼は無罪になったのだが、彼は勤め先の貿易会社の死命を制する通産省の役人を殺したため青森へとばされ、常務の娘との婚約も破棄された。

映画.comより引用

うわっ、前から加山が!!

何一つ翳りのない幸福の肖像ともいえる夫婦の刻に突如亀裂が入る。交通事故によって夫が死亡するのだ。検証の結果、彼を轢いた男・三島史郎は不可抗力による交通事故だとして無罪放免となる。だが、罪意識を持つ彼は由美子へ自主的に入金しようとする。

本作は手続きを通じて「過去」と「罪」を繋いでいく物語である。警察による調査によって事件当時、つまり過去が整理されて「無罪」といった形で切り離される。それは感情的というよりか事務的に処理されていく。

対して三島が罪滅ぼしに入金しようとする行為も手続きが重要視されておりドライである。三島は時に情を交えながら、由美子へ寄り添う言葉を投げかけるも、次の場面では、サラリーマンとしての役割を務めることに専念する。しかし、にかっと眩い顔でねっとりと彼女に執着していく。これは、彼女を想っている以上に自分が赦されたい。自分の罪をどこかへ置いていきたい衝動として捉えることもできるが、由美子側から観ると、延々と「過去」が追ってきているように見える。つまり三島は過去の化身のような役割を果たしているのだ。逃げても逃げても追ってくる。しかも、バカンス日和、翳りのない絶景の中で展開されているのだ。闇を背負った人間は、明るい世界でも気を許せば闇へと転がってしまう。そんな恐怖を成瀬巳喜男は華麗に描いてみせた。あまりにも豊穣な時の中で。

それにしても、VTuber界隈を観ていると、ちょいちょい推しにブロックされていて「俺は何をしたんだ、赦してくれ」と醜悪なポストされているのを見かける。結構、構造は似ている気がする。相手からしたら存在を忘却したい、迷惑行為を記憶から抹消したいのに、相手は赦されたいが故にねっとりと再び接点を持とうとする。意外と、こういうシチュエーションは身近に多い話なのである。

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トーホー(TOHO)