サンセット(2018)
Napszallta
監督:ネメシュ・ラースロー
出演:ユーリ・ヤカブ、ヴラド・イヴァノフ、スザンネ・ヴェストetc
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第82回ヴェネツィア国際映画祭にネメシュ・ラースロー監督の新作が選出されたので、未観だった『サンセット』を観た。
『サンセット』あらすじ
長編デビュー作「サウルの息子」がカンヌ国際映画祭グランプリのほか、アカデミー賞やゴールデングローブ賞の外国語映画賞も受賞したネメシュ・ラースローの長編第2作。第1次世界大戦前、ヨーロッパの中心都市だったブダペストの繁栄と闇を描いた。1913年、ブダペスト。イリス・レイテルは、彼女が2歳の時に亡くなった両親が遺した高級帽子店で職人として働くことを夢見て、ハンガリーの首都ブタペストにやってくる。しかし、現在のオーナーであるオスカール・ブリッルはイリスを歓迎することなく追い払ってしまう。そして、この時になって初めて自分に兄がいることを知ったイリスは、ある男が兄カルマンを探していることを知り、イリスもブタペストの町で兄を探し始める。そんな中、ブタペストでは貴族たちへの暴動が発生。その暴動はイリスの兄とその仲間たちによるものだった。2018年・第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品作品。
大きな物語の小さな話
『サウルの息子』同様に至近のショットを多用した作品となっている。映画の質感としては印象派を彷彿とさせるものがあり、近年の作品だとホン・サンスの『水の中で』が頭に浮かぶのだが、『サンセット』の方がより手法を掘り下げているような気がする。イリス・レイテルは高級帽子店で職人として働くことを夢見て、ハンガリーの首都ブタペストへやってくる。そこで兄の面影を感じ取ってブタペストの街を彷徨う。個人的なミクロな物語を近視的ショットで捉えていく。ただ一方で、この映画のブタペストは第1次世界大戦前であり、大文字の歴史が大きく動くであろう転換期にあった。兄はブルジョワに対する暴動の当事者であり、彼女はミクロな物語からマクロな物語へと滑り込んでいく。光の粒子はひとつでは全体がわからないが粒子が集まることで像が見えてくる。歴史はミクロの視点という粒子によって形成されるのだが、それを映画でやってみせるネメシュ・ラースローの技術力の高さに惹き込まれた。ヴェネツィア国際映画祭に選出された新作も楽しみである。
※映画.comより画像引用