ジュ・テーム、ジュ・テーム(1968)
Je t’aime, je t’aime
監督:アラン・レネ
出演:クロード・リッシュ、オルガ・ジョルジュ=ピコ、アヌーク・フェルジャック、Alain MacMoy、ヴァニア・ヴィレールetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
2025年は、旧作の特集が大渋滞している。そのラインナップにアラン・レネの幻の作品『ジュ・テーム、ジュ・テーム』があったので角川シネマ有楽町まで観てきた。
『ジュ・テーム、ジュ・テーム』あらすじ
「去年マリエンバートで」「二十四時間の情事」などで知られるフランスの巨匠アラン・レネが、1968年に手がけたSFラブストーリー。タイムトラベル実験の失敗により時間の中に閉じ込められ、かつて愛し合った恋人との記憶をランダムに追体験することになった男を描く。
「時間」を研究するクレスペル研究所で、タイムトラベル実験への参加を依頼されたクロード。1年前へ旅だった彼の目の前には夏の真っ青な海が広がっており、そしてそこには、かつて破滅的なまでに愛し合った恋人カトリーヌがいた。しかしマシンの故障により過去に閉じ込められてしまったクロードは、ばらばらに散らばった思い出を追体験していくのだが……。
1968年のカンヌ国際映画祭に出品されたものの、五月革命の余波を受けて映画祭自体が中止となり、その後の興行も芳しいものではなかったことなどから、日本では長らく特集上映などで上映されるのみだった。時を経て再評価が高まり日本でも2024年2月に初の劇場公開が実現。
思索はタイムマシンだ
本作はタイムトラベルものでありながらも変わった視点を持った作品である。時間を研究するクレスペル研究所に人体実験として呼ばれた男がニンニク型のタイムマシンに乗る。特定の時間に1分滞在して戻って来るだけの簡単な仕事だったのだが、障害が発生し、彼は断片的な過去に飛ばされては帰還するを繰り返す。そのランダム性から研究者たちも救助するにできず、指を咥えながら行く末を見守ることとなる。
通常、タイムトラベルものは過去へ飛び歴史を変えるロマンを中心に描かれる。しかしながら、本作における過去はイメージに過ぎず、その過去の中で行動することはほとんどできないものとなっている。つまり、過去に干渉することはできず、過去のリプレイを観させられているだけなのだ。それでも、主人公は念じて特定の時間に移動しようとする。それによって、公衆電話が水没するといったシュルレアリスムなイメージ(=偽の過去)へたどり着くことができるが、愛する者との関係や自殺未遂下自分の過去を変えることはできない。
これはどういうことだろうか?
『二十四時間の情事』や『夜と霧』など、記憶を巡る物語を作ってきたアラン・レネはSFを形而上のギミックとして用い、我々の思索を可視化しようとしたのではないだろうか?我々は人生の中にある痛ましい過去を反芻するようにリプレイする。しかし、リプレイしたところで過去が変わることはない。変化するのは感情だけなのである。それが映画におけるイメージとやつれていく主人公との関係性に反映されているのである。
催眠的な作品ではあるが、面白いアプローチであった。
※映画.comより画像引用