セプテンバー5(2024)
September 5
監督:ティム・フェールバウム
出演:ジョン・マガロ、ピーター・サースガード、ベン・チャップリン、レオニー・ベネシュ、ジヌディーヌ・スアレムetc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第97回アカデミー賞にて脚本賞にノミネートされている『セプテンバー5』を観た。それにしても今回のアカデミー賞はかなり歪んでいるように思える。主要な賞でも、もはや国際長編映画賞がいる必要があるのかと思うほど、非英語の作品が乱入しているし、パレスチナが凄惨な目に遭っているのにイスラエル側の同情を誘うような映画が持ち上げられている。恐らく作品賞を『ブルータリスト』にする代わりにバランスをとって長編ドキュメンタリー賞を『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』に受賞させるシナリオになるかと思うのだが、これは作品そのものの評価は横に置くとして気持ち悪いものがある(『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』が獲らなかったら『Black Box Diaries』になるわけだが、こっちもこっちで大問題という)。『セプテンバー5』もパッとしない経歴の監督作、しかもドイツ映画をわざわざ脚本賞にノミネートさせている。なおかつミュンヘン事件の映画化という「それ、今言う?」案件であり、複雑な気持ちを抱えながら観た。単にイスラエルに対する同情を誘い、パレスチナを悪とするプロパガンダに留まっていないところで評価すべき作品だということがわかった。
1972年のミュンヘンオリンピックで起きたパレスチナ武装組織によるイスラエル選手団の人質テロ事件の顛末を、事件を生中継したテレビクルーたちの視点から映画化したサスペンスドラマ。「HELL」のティム・フェールバウムが監督・脚本を手がけ、報道の自由、事件当事者の人権、報道がもたらす結果の責任など現代社会にも通じる問題提起を盛り込みながら緊迫感たっぷりに描く。
1972年9月5日。ミュンヘンオリンピックの選手村で、パレスチナ武装組織「黒い九月」がイスラエル選手団を人質に立てこもる事件が発生した。そのテレビ中継を担ったのは、ニュース番組とは無縁であるスポーツ番組の放送クルーたちだった。エスカレートするテロリストの要求、錯綜する情報、機能しない現地警察。全世界が固唾を飲んで事件の行方を見守るなか、テロリストが定めた交渉期限は刻一刻と近づき、中継チームは極限状況で選択を迫られる。
出演は「ニュースの天才」のピーター・サースガード、「パスト ライブス 再会」のジョン・マガロ、「ありふれた教室」のレオニー・ベネシュ。第82回ゴールデングローブ賞の作品賞(ドラマ部門)ノミネート、第97回アカデミー賞の脚本賞ノミネート。
今、それをやる感はあるのだが
放送室、無数のモニター。スタッフは、いくつものモニターを監視しながら決定的瞬間を捉えるために指示を出す。当時の技術ゆえ、途中で映像が落ちるものの、エンジニアが的確に復旧し、別のスタッフがリカバリーをしていく。事件は会議室で起きてるんじゃない。でも、報道陣は、現場で起こっている事件を正確に捉えようと議論し限られた情報の中から決断をする。その結果、会議室でも事件が発生してしまう。本作は報道のプロたちが、情報が集まる放送室を軸に、断片的な音、資料、映像を頼りに歴史的瞬間をどのように捉えようとするのか、その結果で生じる問題について描いている。報道のプロとして裏取りを取り「人質が解放された」と喜ぶも、それがデマだった時に顔面蒼白となりながら、次の一手を模索しようとする様。カメラを回したことによってテロリストに宣伝効果と有利な情報を与えてしまう様など、メディアのジレンマを徹底的にでもコンパクトにまとめ上げる手腕は見事であった。ただ、パレスチナを悪とみなすような題材を今やる必要はあったのかねと疑問は残るのであった。
※映画.comより画像引用