ガール・ウィズ・ニードル(2024)
原題:Pigen med nålen
英題:The Girl with the Needle
監督:マグヌス・フォン・ホーン
出演:ヴィクトリア・カルメン・ゾンネ、トリーヌ・ディルホム、Besir Zeciri、Ava Knox Martin etc
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第97回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた『ガール・ウィズ・ニードル』を観た。マグヌス・フォン・ホーン過去作の『波紋』『スウェット』を観逃していたので、今回初対面であったのだがバキバキに決まった撮影に惹きこまれた。
『ガール・ウィズ・ニードル』あらすじ
スウェーデン出身でポーランドで映画制作を学び、これまでに発表した長編「波紋」「スウェット」もそれぞれ高い評価を得たマグヌス・フォン・ホーンの長編監督第3作。第1次世界大戦直後のデンマークで実際にあった犯罪を題材に、混沌とした社会のなかで貧困から抜け出そうと生きる女性の姿を鮮烈なモノクロームの映像で描いた。2024年・第77回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されたほか、第97回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされた。
第1次世界大戦後のデンマーク、コペンハーゲン。貧困から抜け出そうと必死にもがく若い工場労働者の女性カロリーネは、恋人に裏切られて捨てられたことで、お腹に赤ちゃんを抱えたまま取り残されてしまう。そんな中、彼女はダグマーという女性と出会う。ダグマーは表向きはキャンディショップを経営しているが、その裏で秘密の養子縁組機関を運営しており、貧しい母親たちが望まない子どもを里親に託す手助けをしていた。ダグマーのもとで乳母として働くことになったカロリーネは、ダグマーに親しみを感じ、2人の間には絆も生まれていくが、カロリーネはやがて恐ろしい真実を知ってしまう。
カロリーネ役は「MISS OSAKA ミス・オオサカ」「ゴッドランド GODLAND」のビク・カルメン・ソンネ、ダグマー役は「ザ・コミューン」で第66回ベルリン国際映画祭の銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞しているトリーヌ・ディルホム。
『工場の出口』の反復について
本作の撮影を手掛けたミハウ・ディメクは、『リアル・ペイン 心の旅』の撮影でもあるので注目されているが、実は『ガール・ウィズ・ニードル』路線が主戦場なのかもしれない。他の代表作に『EO イーオー』があるのはもちろん、撮影環境を構築するグリップの仕事として『COLD WAR あの歌、2つの心』に参加しているからだ。特に『COLD WAR あの歌、2つの心』での群れの撮影は、本作に多大なる影響を与えていることは明白であろう。
映画は、いわゆる「やり逃げ」された工場労働者の女性の悲痛の決断を描いたもの。建物の影でセックスを始める様子を通りかかりの人が目撃するギョッとするようなショット、痛々しく生々しい描写との間に『イレイザーヘッド』や『魔女』を応用したような不気味で虚構的なショットを重ねていくスタイルによって観る者を惹きこんでいく。
特に注目すべきはリュミエール兄弟『工場の出口』を反復引用する場面であろう。工場労働者のルーティンワーク、匿名性と「使い捨てられる女性像」を重ねていく視点は『ジャンヌ・ディエルマン』における主婦像とは異なった角度で鋭利に踏み込んだものがあった。
※映画.comより画像引用