Emilia Pérez(2024)
監督:ジャック・オーディアール
出演:ゾーイ・サルダナ、セレーナ・ゴメス、エドガー・ラミレス、Karla Sofía Gascón、アドリアーナ・パス、マーク・イヴァニールetc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第77回カンヌ国際映画祭で審査員賞と女優賞の二冠に輝いたジャック・オーディアール新作はなんとミュージカルである。ブリュノ・デュモンしかりレオス・カラックスと巨匠や鬼才はミュージカル映画を作りたがる傾向があるわけだ。そして大抵、奇を衒ったことをやろうとする。今回は麻薬カルテルものとジェンダーの話を混ぜ合わせたものとなっていた。
『Emilia Pérez』あらすじ
Emilia Pérez follows four remarkable women in Mexico, each pursuing their own happiness. Cartel leader Emilia enlists Rita, an unappreciated lawyer, to help fake her death so that she can finally live authentically as her true self.
訳:エミリア・ペレスは、メキシコを舞台に、それぞれの幸せを追い求める4人の傑出した女性たちを描く。カルテルのリーダーであるエミリアは、自分の死を偽装するため、不遇な弁護士リタを雇う。
麻薬カルテルミュージカル
冒頭、ゾーイ・サルダナ演じる弁護士がメキシコの雑踏を歩きながら仕事に対する不満を語っていく。ミュージカルは映画との相性が悪く、クローズアップによって身体全体の動きが遮断されてしまう問題がある。確かに、序盤のミュージカルパートは顔を強調しているものの、群れが織りなす運動の躍動感や、映画として場所がシームレスに切り替わっていく様で乗り切っていく。職人としての風格と軽快さを兼ね揃えた作品であることが伝わってくる。実はジャック・オーディアールがこのようなミュージカルを撮るのは必然であった。
少し前に、フランスのロックバンドNoir Désir”Comme Elle Vient”のミュージックビデオを手掛けている。これが全編手話にって楽曲の世界へ誘うものとなっており、上半身のショットを中心に添えつつ躍動感がある作品に仕上がっていた。
ミュージカルパートは当然ながらバークレーショットが使われるも、バークレーを超えて見せようと複雑な人間の動きをデジタルサイン織り交ぜヴァーチャル/フィジカルの融合を提示したり、現代版『泥酔夢』顔ショットを実装していたりする。
また、母語フランス語ではない言語によって新しいチャネルを開こうとするのがジャック・オーディアール最近の関心といえる。それは、性適合手術によって「女性になる」運動へと繋がっていくのである。あまり期待していなかったのだが、それなりに面白い作品であった。