スユチョン(2024)
原題:수유천
英題:By the Stream
監督:ホン・サンス
出演:キム・ミニ、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、ハ・ソングクetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第25回東京フィルメックスでホン・サンス『スユチョン』が上映された。ホン・サンスは年に数本と怒涛のペースで映画を作っているため、映画祭上映でも彼のペースに追いつけていない感じがするものの、比較的彼の作品を掬いあげているのが東京フィルメックスの魅力だったりする。ホン・サンスはあたりはずれが大きく、良く分からない作品は全く分からない事態に陥りがちなのだが、本作は若干その傾向が強かった。
『スユチョン』あらすじ
ソウルの女子美術大学を舞台にしたこの映画は、もうそれほど若くはない大学講師のジョンイムが、かつてはその分野で有名だった叔父のチュ・シオンに大学の演劇祭で学部の学生たちの寸劇を演出させようと大学に招へいするところから始まる。演劇祭の準備が始まり、その過程でシオンはジョンイムの上司で彼の大ファンである女性教授チョンと親しくなっていく……。本作は「A Traveler’s Needs(英題)」に続く今年2作目のホン・サンス監督作品。登場人物たちが食事をし、酒を酌み交わす場面で重要なことが示唆されることが多いホン作品だが、この作品もその例に漏れず、川沿いにある鰻料理店で多くの進展や転回が起こる(また、川沿いの店ではないが、演劇祭の打ち上げの席で学生たちが独白する場面は不意に訪れる感動的なシーンだ)。ジョンイムは織機で繊細なパターンの織物を作る新進の芸術家であり、そのことがこの作品の主題の一つである演劇の考察と共に、作品にもう一つのレイヤーを与えている。ロカルノ映画祭のコンペティション部門で上映され、主演のキム・ミニが最優秀演技賞を受賞した。
※第25回東京フィルメックスより引用
ホン・サンスはビジネス本を出した方が良い気がする
大学の演劇祭まであと10日、大学講師のジョンイムは叔父の助けを借りて寸劇作りの指導を行おうとする。ダラダラとした時間の中でドロドロとした人間関係が紡がれていく。ワークショップっぽい演劇要素の入った映画や謎にこじれる人間関係の映画とは相性が悪く、観ている間、「ホン・サンスは映画を作るより、《飲みニケーションの極意》たるビジネス本を出版すべきなのでは」と考えてしまってイマイチピンと来なかった。
ただ、通常のホン・サンスえいが以上に映画的なショットが散見されたような気もして、例えば暗がりで男と女が親密な会話をしてそうなところをメンバーが見つけるショットでは、直前のショットや音の関係から、二人が木の下で話しているところにカメラの背後から凸するよう見せかけて別の場所から現れる裏切りのショットがあったり、大きな葉をフワつかせる情緒的ショットがあったり、キム・ミニが突然古畑任三郎のように男の矛盾を指摘する場面があったりと観応え自体はあった。
また、飲み会のシーンで詩を読ませる部分では、上司の無茶ぶりに付き合わされて苦笑いする若干ヒリついた空気となっておりリアルな描写に感じた。ホン・サンスはあまり合わないので卒業しようと思いつつも、ワンチャン傑作かもしれない甘い期待に乗せられて観てしまうのですよね。