Melanie Martinez: K-12(2019)
監督:メラニー・マルティネス
出演:メラニー・マルティネス、エマ・ハーベイ、ザイオン・モレノ
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
先日、第2回めーぶれバトルロワイヤルに急遽参加し、ナオミントさん(@minmin70)とミュージカル映画プレゼンバトルをした。その際に、彼女は『Melanie Martinez: K-12』を紹介していた。本作はずっと積み映画していたものなのだが、彼女のプレゼンを聴いて観たくなったのでプライムビデオへ足を運んだ。主人公の名前から察するにジョン・ウォーターズを意識した露悪的なミュージカルとなっている。一見すると、ファッションゴリ押し映画に思えるのだが、建築史を知った上で観ると理にかなっているものがあった。
『Melanie Martinez: K-12』あらすじ
Melanie Martinezによるこの不気味な魅惑的な音楽映画の中で、強くて敏感な少女、Cry Babyは、個性に厳しく反対する気を散らす不眠症の学校に送られます。彼女の魔法の友達とLilithというAngelic Spirit Guideの助けを借りて、彼らは学校の邪悪なスタッフと戦ってK-12の抑圧的な学校システムを破壊する。
※Amazonより引用
ロココ調のディストピアにて
絶対権力を握っていたルイ14世の時代における荘厳な美に対する反動として、力をつけた市民や貴族たちが生きる喜びを甘美に描こうとした。それがロココ様式の始まりであったのだが、やがて宮廷中心の美術として取り込まれてしまう。1789年にフランス革命が起き、貴族勢力が市民に奪われる中で「宮廷のだらしがない文化をやめよう」と古代ローマのたくましさを再評価する新古典主義が始まった。
このロココ様式の栄枯盛衰を踏まえると、本作における宮殿テイストな舞台装置の意図が明瞭になる。寄宿学校に入学した女が、学校の陰謀を見抜き革命を起こそうとする。見た目は甘美で見る者を魅了する空間となっているのだが、学校の規則にそぐわない者にはロボトミーに近い洗脳、投薬行為が行われているディストピア社会であった。
美しくもだらしがなく混沌としている様をロココ様式の学校に象徴させながら、学生(=市民)が革命を起こしていく過程は、フランス革命が起き新古典主義が幕を上げるプロセスを意識したようなものとなっており、実は奥深い一本といえる。
ミュージカル演出においても、バークレーショットを用いるが、形式的な引用に留まらず、カットを割ることでマスゲームを立体的に表現する工夫が確認できるので楽しい一本であった。