『Best Secret Place』デジタル空間の異質さ

Best Secret Place(2023)

監督:キャロリーヌ・ポギ、ジョナタン・ヴィネル
出演:Idir Azougli、Bitsu、Chouf

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『メタルギアソリッドV』のクワイエットから着想得た『ジェシカ』のキャロリーヌ・ポギ&ジョナタン・ヴィネルコンビがまたしてもゲームからインスパイアを受けた作品を放った。どうやら二人は一貫してゲーム×映画の関連性を模索する方向性らしく、2024年はネトゲを題材にした『Eat the Night』を発表している。『ジェシカ』を観た時は、映画ではない何かにしか思えず微妙に感じたが、2020年代のテーマである「映画のような映画ではない何か」を語る上でキャロリーヌ・ポギ&ジョナタン・ヴィネルコンビは重要だと感じた。

『Best Secret Place』あらすじ

Every night, characters wake up in a secret place. They don’t know where they are or how they got there. In search for clues on the walls, in the graffiti, they populate the space with their fears, desires and dreams. In this unusual dream-like decor, the melancholy gradually turns into light.
訳:毎晩、登場人物たちは秘密の場所で目を覚ます。彼らは自分がどこにいるのか、どうやってそこにたどり着いたのか知らない。壁の落書きに手がかりを求め、彼らは恐怖、欲望、夢で空間を埋め尽くす。この珍しい夢のような装飾の中で、憂鬱は次第に光へと変わっていく。

MUBIより引用

デジタル空間の異質さ

目を覚ますと、そこは廃墟のような空間。チェシャ猫のように壁画がしゃべり出す中、人は彷徨う。それはまるでゲームのバグ世界のようであり、ポータルを開けたり、Modでアイテムを増やしたりする。そして映画はグラセフとシンクロする。

本作は、夢と実態としての廃墟、デジタル廃墟を結び付けたユニークな一本だ。廃墟へ行くと、かつて人がいた痕跡に独特な感触を覚える。ではゲームはどうだろうか?確かにプログラムによって作られている。しかし、自動生成される部分は制作者が直接関与していない。つまり、プレーヤーだけが知る、人が作ったような場所となる。また、MODや制作者の意図しない遊び方によって開かれる空間もまた、人が関与しているようで関与していない異様な空間となる。

この異質さはなんだろうか?

キャロリーヌ・ポギ、ジョナタン・ヴィネルは「夢」に例えてみせた。夢は無意識にあるものによって生成される。人が経験したものをベースに、現実のようで現実ではない場所として現出し、当事者はそれを現実として受け入れる。映画の主人公も、謎の空間を受け入れ彷徨い歩く。その中で、ゲームのバグのような怪奇と対峙する。

また、ゲーム内コミュニティの開かれているようで閉じた空間。廃墟にたむろするヒッピーのような雰囲気が表現されているのだが、『ニッツ・アイランド』を観ると納得がいく。日本だとVTuberやゲーム実況者がオンラインゲームで交流し、時には物語を共同で編み込むキラキラしたイメージがあるが、どうやらフランスではダウナーな集団プレイが主流らしいことを知った。