エイリアン:ロムルス(2024)
Alien: Romulus
監督:フェデ・アルバレス
出演:ケイリー・スピーニー、デヴィッド・ジョンソン、アーチー・ルノーetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
数か月前から『エイリアン』最新作に対する期待が高まっている。一般的には『エイリアン』『エイリアン2』を主軸としたレビューが多いのだが、予告編を観ると明らかにゲーム『Alien: Isolation』の要素も取り込んだものとなっておりワクワクしていた。実際に観てみると、その予感は的中しており、:実は巨大なビジネスに蹂躙されるドラマとして知られる《エイリアン》の血を継承しつつ、アレンジを利かせたくどさがギャグとして機能する魅力に満ち溢れた一本となっていた。
『エイリアン:ロムルス』あらすじ
リドリー・スコット監督による1979年の傑作「エイリアン」の“その後”を舞台に、エイリアンの恐怖に遭遇した若者たちの運命を描くSFサバイバルスリラー。「ドント・ブリーズ」のフェデ・アルバレスがメガホンをとり、リドリー・スコットは製作を手がけた。
人生の行き場を失った6人の若者たちは、廃墟と化した宇宙ステーション「ロムルス」を発見し、生きる希望を求めて探索を開始する。しかしそこで彼らを待ち受けていたのは、人間に寄生して異常な速さで進化する恐怖の生命体・エイリアンだった。その血液はすべての物質を溶かすほど強力な酸性であるため、攻撃することはできない。逃げ場のない宇宙空間で、次々と襲い来るエイリアンに翻弄され極限状態に追い詰められていく6人だったが……。
出演は「プリシラ」のケイリー・スピーニー、「ライ・レーン」のデビッド・ジョンソン、「もうひとりのゾーイ」のアーチー・ルノー、「マダム・ウェブ」のイザベラ・メルセドら。
重力に抗えぬ者たち
エイリアンシリーズの醍醐味は、SFホラーとしての魅力だけでなく、企業ドラマの生々しさにある。1作目では、下っ端社員がプロフェッショナルとして業務を遂行しようとしつつも最悪の方向へと転がる中で、従業員を捨て駒として見なす企業像が露わとなった。2作目では、一番の当事者であるリプリーがただの参考人として都合よく使われる中で惨事が発生する物語となっていた。ウェイラン・ユタニ社にとって重要なのは、従業員ではなく新しい資源になりゆるエイリアンなのである。そして、従業員は宿命のように企業に絡み取られて消費されてしまう。
閑話休題、本作では、会社、社会によって縛られ、逃げようとしても逃げられない状況を「重力」に象徴させている。年間日照時間0時間の仄暗い惑星の鉱山で働くレインは、ようやくアンドロイドのアンディと新天地へ飛びたてると思っていたにもかかわらず、不当な契約更新によってこの地に押さえつけられる。そんな彼女は元恋人の誘いに乗り、廃墟となった宇宙ステーションを使って脱出を試みることとなる。しかし、この宇宙ステーションにはエイリアンやフェイスハガーが多数潜伏していた。
折角、重力に逆らって新天地へ目指そうとするも、宇宙ステーションにて再び企業(ウェイラン・ユタニ社)という重力に押さえつけられ、愛するアンディも操られてしまう。逆らおうとするも逆らえない中で、エイリアンが執拗に追尾していく。
映画は丁寧に、ネズミの死体を使って重力装置のON/OFFを提示することで抗いの物語であることを強調する。その結果として生まれるのは、レインが重力に抗うのではなく、重力の特性を受容し問題へと対処していく場面である。酸が浮遊する空間であっても、銃の反動を使って回避し、落下と宙づりを組み合わせながら間一髪で難を逃れていくところは涙無くしてみることはできなかった。
また、本作は一作目における宇宙ステーションの空間造形の魅力を継承しつつ、エイリアンと対峙するためのバトルスペースとして比較的長く広い空間造形となっている。これは、明らかに『Alien: Isolation』の影響であろう。ところどころ、RTA動画で観たような光景が広がっていた。
ラストのギャグとしか言いようがない同人誌的展開は観た人のご褒美である。