シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024)
Civil War
監督:アレックス・ガーランド
出演:キルスティン・ダンスト、ケイリー・スピーニー、ワグネル・モウラ、スティーヴン・ヘンダーソンetc
評価:採点不能
おはようございます、チェ・ブンブンです。
2024/7/13(土)ドナルド・トランプ前大統領が撃たれた。東部ペンシルベニア州で行われた選挙集会で演説を行っている最中、複数の発砲が聞こえ、彼の右耳を銃弾が貫通した。その時、ひとりのAP通信カメラマンも彼を撃った。2021年にピューリッツァー賞を受賞したエバン・ブッチは、シークレットサービスに守られながら星条旗を背に拳を突き上げる彼の姿を完璧な構図で撮影したのだ。
さて、国際的に民主主義が終焉に向かう中、境界線なき内戦を扱ったA24最新作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の日本公開日が10/4(金)に決まった。4月に全米公開された本作であるのだが、ドナルド・トランプ銃撃事件の後に観るとあまりに重い内容である。今回、マスコミIMAX試写で一足早く観させていただいたのだが、そう簡単に点数化してはいけない作品であった。評価保留なりにレビューを書いていく。
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』あらすじ
A journey across a dystopian future America, following a team of military-embedded journalists as they race against time to reach DC before rebel factions descend upon the White House.
訳:反乱軍がホワイトハウスを襲撃する前にワシントンDCに到着するため、時間との闘いに挑む軍に組み込まれたジャーナリスト・チームの姿を描く、ディストピア的な未来のアメリカを横断する旅。
After Donald trumps death
任期3期目を迎えるために憲法改正したアメリカ大統領が「我々は勝利に近づいている」と演説をしている。どうやら、この憲法改正を巡って内戦が勃発、本来ではありえないだろう共和党支持者が多いテキサス州と民主党支持者の多いカリフォルニア州が同盟軍Western Forcesを結成し、政府軍と戦闘状態にあるのだ。
そんな渦中、歴史の1ページを捉えようと報道カメラマンが勇猛果敢にフロントラインに立つ。暴力が行使され、爆破銃撃による凄惨な死が目の前で広がる中、救命活動よりも報道写真家としてカメラという銃を取り出し撃ち続ける。ティック・クアン・ドック焼身自殺のような写真も撮られ、我々観客の心はざわつくことだろう。
映画は伝説的なカメラマンであるリー(キルステイン・ダンスト)がひょこんなことから、戦場カメラマンに憧れを抱くジェシー(ケイリー・スピーニー)と共に大統領への突撃インタビュー敢行を目指しワシントンを目指す。アメリカは分断されており、敵か味方か分からない状態。ガソリンスタンドで給油する際にも命をすり減らすこととなる。
さて、『シビル・ウォー』が今や下半期問題作なのは、スペクタクル的消費を促す作品になっていることだ。本作でのアクションは映画というよりかはゲームに近い。A24絡みなので小島秀夫が監修したのかと思う程のスニーキングアクションとなっているのだ。序盤は『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』Act1のように戦況に応じて仲間を作ったり、ひとりで作戦を完遂させていくスニーキングアクションの趣があり、後半ではFPSゲームでヘッドショットをキメる快感がある。それをノリノリの音楽で包み込むのだ。正義も悪も分からない混沌とした状況、志高く戦場に繰り出したジェシーがやがて本能的にカメラの銃を撃ち抜く様を象徴したかのようなゲーム的高揚感がある。
ただ、エバン・ブッチがドナルド・トランプを英雄的に撮った写真を前にこの演出と向き合うと複雑な気持ちになる。スペクタクル的消費に取り込まれてしまう様を皮肉として描いているのだろうけれども、あの事件の後に観るとあまりにも重く、そして怖い演出だからだ。海外でも賛否は割れているそうだが、日本公開されたらさらに激しく賛否が分かれることであろう。特にアジア人に対するとある描写に関しては検討されることだろう。
是非ともあなたの目で地獄絵図を確認してみてくれ!
※映画.comより画像引用