『エデンより彼方に』緑の光線はハッテンの誘い

エデンより彼方に(2002)
FAR FROM HEAVEN

監督:トッド・ヘインズ
出演:ジュリアン・ムーア、デニス・クエイド、デニス・ヘイスバート、パトリシア・クラークソン、ヴィオラ・デイヴィスetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『メイ・ディセンバー』がもうすぐ公開となるのでトッド・ヘインズの代表作『エデンより彼方に』を観た。本作はダグラス・サ―ク『天はすべて許し給う』にインスパイア受けたドラマであり、色彩演出は彼の技術を再現していることで知られている。正直、ダグラス・サークは得意ではないのだが、今回観てみてかなり楽しめた。一歩、ダグラス・サークから引いたところから観ると違った世界が広がっている作品といえる。

『エデンより彼方に』あらすじ

「ベルベット・ゴールドマイン」で私的グラム・ロック観を描いたトッド・ヘインズ監督の新作は、50年代のメロドラマを克明に再現してアカデミー主演女優賞、脚本賞、撮影賞、作曲賞にノミネート。50年代のエレガンス溢れる衣装は、前作でも組んだデレク・ジャーマン映画の常連、サンディ・パウエルが担当。撮影は「ヴァージン・スーサイズ」のエドワード・ラックマン。音楽は「荒野の七人」の大御所エルマー・バーンスタイン。

映画.comより引用

緑の光線はハッテンの誘い

なに一つ不自由ない典型的な中産階級サバービア暮らしの妻キャシーはある時、夫が同性愛者であることを知り、彼を治そうとする中で黒人の庭師と恋愛関係になる。

本作の凄いところは、夫が同性愛者であることが発覚するまでの流れであろう。映画館に夫が行く。入口の方で、映画にさほど興味なさそうに突っ立っている。次のショットでは入口付近におり、緑の光差し込む階段に吸い込まれていく男の後を追っていく。やがて、緑の光に覆われた怪しげなバーにたどり着く。そして夫にある男が眼差しを向ける。その後の展開は省略され、キャシーのパートに行く。緑の服を着た彼女が夫を追跡すると、性的関係の現場を目撃してしまう。つまり、直前の追跡劇はハッテンの余興であり、あの映画館は、バーはハッテン場だと判明するのだ。この流れが華麗である。

ほかにも黒人の少女が追われる場面。落とし物を拾うかどうかで宙吊りのサスペンスが生まれ、やがて袋のネズミ的状況に追い込まれながら石を投げつけられる。的確に暴力のアクションを挿入していく鮮やかさに魅了された。

『メイ・ディセンバー』に対する期待が高まる一本であった。
※映画.comより画像引用