常に備えよ(2019)
Stay Awake, Be Ready
監督:ファム・ティエン・アン
評価:90点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
アテネ・フランセでのファム・ティエン・アン監督特集で短編映画『常に備えよ』を観た。実はMUBIで昔見かけたことのある作品だったのだが、『黄色い繭の殻の中』に通じるものがあった。
『常に備えよ』あらすじ
On a street corner a mysterious conversation among three young men at a street stalls. Meanwhile a traffic accident on a motorbike. The night brings together a sketch, a multicolor frame of reality.
訳:街角の露店で3人の青年が謎めいた会話を交わす。一方、バイクの交通事故。夜、スケッチ、現実の多色フレームが一つになる。
フレームの外側の事故は思わぬところから
屋台街にカメラのフォーカスが当たる。喧騒としたありふれた空間だが、突如交通事故が発生する。しかし、カメラは事故にはフォーカスを当てず、ジッと子どもの大道芸人を捉える。誰も金を払わない中、ひとりで炎を食べたり吐いたりしている。やがて、手前のおっさんのテーブルにカメラが向けられる。ワンカットで決定的事故の瞬間を映さず、思わぬ形で事故がフレームインする様子を描いた短編。この複雑なカメラワークからは『黄色い繭の殻の中』における冒頭を彷彿とさせる。ファム・ティエン・アン監督は、この時点で画の主体が耳にする音に着目しており、おっさんがイヤホンをするとクラシック音楽が流れる演出が施されている。短編映画はあまりみないのだが、『黄色い繭の殻の中』と連続して観るとあたらしい発見がある作品であった。