『WALK UP』ホン・サンスには深夜のSNSのような味わいがある

WALK UP(2022)

監督:ホン・サンス
出演:クォン・ヘヒョ、イ・ヘヨン、ソン・ソンミ、チョ・ユニ、パク・ミソ、シン・ソクホetc

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

怒涛のように新作を発表するホン・サンス。カイエ・デュ・シネマが2024年のベストに選ぼうとしている『WALK UP』が日本公開されたので観てきた。ホン・サンス映画論を語る上で重要な一本といえる作品だった。

『WALK UP』あらすじ

韓国の名匠ホン・サンスが、都会の4階建てアパートを舞台に芸術家たちが織りなす人間模様をモノクロームの映像でつづった人間ドラマ。

映画監督のビョンスは、インテリア関係の仕事を目指す娘ジョンスとともに、インテリアデザイナーとして活躍する旧友ヘオクの所有するアパートを訪れる。そのアパートは、1階がレストラン、2階が料理教室、3階が賃貸住宅、4階が芸術家向けのアトリエ、そして地下がヘオクの作業場となっていた。ワインを酌み交わしながら、和やかに語り合う3人。やがてビョンスは仕事の連絡が入ったためその場を離れるが、戻ってくるとジョンスの姿が見当たらず……。

アパートの階をひとつずつ上がるごとに物語は4つの章に分かれ、ビョンスと彼を取り巻く4人の女性の人間模様は予測不能な方向へと展開していく。「それから」「夜の浜辺でひとり」のクォン・ヘヒョが映画監督ビョンスを演じ、「あなたの顔の前に」のイ・ヘヨン、ホン・サンス作品の常連俳優ソン・ソンミ、チョ・ユニが共演。

映画.comより引用

ホン・サンスには深夜のSNSのような味わいがある

ホン・サンスは複数の時間を並べながら物語ることを得意としている。かつては『3人のアンヌ』のように明確に世界に境界線を引き互いが交わることはなかったのだが、『川沿いのホテル』や『それから』『小説家の映画』のようにシームレスに時空間を横断しようとする試みを観測することが増えてきた。『WALK UP』は新しい境地を見出したような作品である。アパートを軸に、上り下りを通じて人間関係が分断され、他愛のない話が語られる。映画はいくつかの描写を反復させることにより、パラレルな世界線のようなものを築き上げる。正直、映画の中で語られることはまるで全く知らない人の飲み会に参加してしまったかのような虚無でよく分からないし、関心するようなものは見当たらないのだが、映画監督の語りでアパートの部屋が内的世界だということが段々と明らかにされてくる。映画監督というと立派なイメージがあるが、実際にはウジウジト内に引き篭もっており、深夜のSNSのようにちょっぴり哲学的なことを呟く。本作は、映画監督を中心に、他者を内なる自問自答のために立てた他者と定義し、構図の反復により分岐する思索を表現しているといえよう。理論だけ聞くと凄いのだが、今回のホン・サンスは正直ハマらなかった。