『レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)』脳天にテレビ直撃、迷い込むはB級映画の世界

レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)(2022)
原題:Ang Pagbabalik ng Kwago
英題:Leonor Will Never Die

監督:マルティカ・ラミレス・エスコバル
出演:シーラ・フランシスコ、ボン・カブレラ、ロッキー・サルンビデス、アンソニー・ファルコンetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

以前から、異様なポスターヴィジュアルが気になっていたフィリピン映画”Leonor Will Never Die”。大阪アジアン映画祭で上映されるも逃しており、悶々としていたのだが2024/1/13(土)よりシアター・イメージフォーラムにて上映が決定した。試写で一足早く鑑賞したので感想を書いていく。

『レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)』あらすじ

頭部を強打してヒプナゴジア(半覚醒)に陥った元映画監督が、脳内でアクション映画の世界を駆けめぐる姿を描いたフィリピン発の奇想天外コメディ。

かつてフィリピン映画界で活躍した女性監督レオノール・レイエスは、引退して72歳になり、借金や息子との関係悪化に悩む日々を送っていた。ある日、新聞で脚本コンクールの記事を目にした彼女は、未完だったアクション映画の脚本に取り組むことに。そんな矢先、レオノールは落ちてきたテレビに頭をぶつけてヒプナゴジアに陥り、脚本の世界に入り込んでしまう。息子は必死に母を現実の世界へ引き戻そうとするが……。

フィリピン人として初めて英国ロイヤル・ナショナル・シアターで公演した名優シェイラ・フランシスコが、主人公レオノールをチャーミングかつエネルギッシュに演じた。監督・脚本はマニラ出身の新鋭マルティカ・ラミレス・エスコバル。2022年サンダンス映画祭ワールド・シネマ(ドラマ)部門で審査員特別賞を受賞。

映画.comより引用

脳天にテレビ直撃、迷い込むはB級映画の世界

実に不思議な作品であった。映画業界から引退したおばちゃんが、家族と揉めている日常が描かれているのだが、そこに幽霊のような存在が忍び込む。扇風機の電源を入れ、新聞を撒き散らす。そこに脚本コンクールのことが書かれており、おばちゃんは箱にしまっていた企画をリライトする。そんなある日、彼女が外で脚本を練っているとテレビが落ちてきて、脳天に直撃。彼女は昏睡状態となる。そのまま、映画の脚本の世界に迷い込むおばちゃん。狼狽する息子はなんとか彼女を救助しようとする。

脚本の世界はB級映画の世界となっており、激しい銃撃戦が繰り広げられるのだが、創造主であるおばちゃんは堂々と工場のような場所を徘徊しながら参戦しようとする。これが滑稽で面白い。かと思うと映画的な洗練されたショットが突如迷い込む。例えば、違法DVDショップの前で遊んでいる少年がいる。死角からおばちゃんが登場し、傘を銃に見立ててバン!と撃つ場面は妙にカッコよく感じるのである。

そして本作はある種『8 1/2』系統の作品であるので、脚本いじりをメタ的に表現する場面があり、これがまたユニークだったりする。フィリピン映画といえば、ブリランテ・メンドーサやラヴ・ディアスのような社会派作品のイメージが強い。しかし、『Death of Nintendo』に引き続きユニーク映画とエンカウントしやすい土壌ができているように思えたのであった。

※映画.comより画像引用