【Netflix】『アンチソーシャル・ネットワーク: 現実と妄想が交錯する世界』米国のネットミーム汚染の歴史

アンチソーシャル・ネットワーク: 現実と妄想が交錯する世界(2024)
The Antisocial Network

監督:ジョルジオ・アンジェリーニ、アーサー・ジョーンズetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

アメリカではQアノン映画として物議を醸した『サウンド・オブ・フリーダム』が特にその件に触れられず日本公開されようとしている。各種映画媒体から公開のアナウンスがあるも「初日興行収入第1位」「23年全米映画興収トップ10」とだけ謳われており、その背景について説明されてはいない。クリスチャン映画informationのように、自分たちの立ち位置を表明しているならまだしも、これは非常にまずい状況といえる。さて、Qアノンを筆頭とするアメリカの陰謀論はどのように広まったのか。Netflixに一本の参考になるドキュメンタリー映画があった。それが『アンチソーシャル・ネットワーク: 現実と妄想が交錯する世界』である。以前、アメリカのネットミームから自身のキャラクターを救い出そうとする『フィールズ・グッド・マン』を作ったジョルジオ・アンジェリーニ、アーサー・ジョーンズコンビの新作だ。どうやら、すべての始まりは2ちゃんねるからだったらしく、そして日本のミーム汚染よりグロテスクで壮絶な世界がそこにはあった。

『アンチソーシャル・ネットワーク: 現実と妄想が交錯する世界』あらすじ

アメリカのひとりの若者が、日本の古典的BBS「2ちゃんねる」をモデルに立ち上げた「4chan」が、全米のオタクたちに熱狂的に支持され、21世紀のアメリカの文化と政治に大きな影響を及ぼしていく様子を描いたドキュメンタリー。

マスクをかぶった「アノニマス」たちが「ウォール街を占拠せよ」と世界中で行ったデモ、トランプが大統領になった後の「Qアノン」の台頭や、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件など、アメリカの若者たちの大規模デモにおいて、4chanが活動の温床になっていたことが明らかにされる。

監督は、4chan上で人気者になった「カエルのペペ」をモチーフにしたドキュメンタリー「フィールズ・グッド・マン」にもスタッフとして携わったジョルジョ・アンジェリーニとアーサー・ジョーンズが共同で務めている。Netflixで2024年4月5日から配信。

映画.comより引用

米国のネットミーム汚染の歴史

1990~2000年代の日本は独自のカルチャーを発信し続ける場として国際的に注目を集めていた。アメリカの孤独な若者たちは2ちゃんねるのスレッド文化に注目する。そしてアメリカ版として4chanが作られる。4chanでは映画やアニメ、政治家の画像に一言載せたジョークが流行り、人気のある画像を作っては載せを繰り返し、ダーウィンの進化論的に発展していった。現実に居場所のない若者たちに居場所を用意し、ジョークが新たなコミュニケーションとして文脈を形成していった。やがて、ニコニコ超会議に近いイベントが開かれるまでに4chaは大きくなっていったのだが、段々と「荒らし」行為が過激になっていき、現実にまで影響を及ぼしていく。

これがとても怖い。ニコニコ超会議のような場所で、若者たちが次々とヒトラーの敬礼をして回ったり、アメーバピグのような空間で黒人のアバターが場を占拠したりする明らかに政治的な動きを取るのだ。アノニマスもQアノンもその文脈から生まれ、終いには国会議事堂を襲撃するようになる。

日本だと、ここまで過激なデモをするような状況にまで発展しないが、アメリカだと現実を荒らしていく。それも自分が信じたい真実という虚構でもって殴ってくるのがエゲツないなと感じた。全く恐ろしいもんだ。